
蛍光画像の利点は、標本の雑然とした要素を取り除き、研究者がこれまで気づかなかった、あるいは気づけなかった細部に注意を向けられるようになることだとスミス氏は言う。
この方法のゼラチンに関する部分を改良したのは、スミス氏の研究室をボランティアとして手伝ったチェスニー・バック氏と、カンザス大学でスミス氏の下で研究を行っている博士課程の学生マット・ジラード氏だ。ジラード氏は、染色した標本をゼラチンに埋め込む方法が、新たな可能性を切り開いたと話す。
「ピンセットや手で動かしてやれば、骨同士が関節でどのようにつながっているのかを観察できます」とジラード氏は言う。「また、ある骨の後ろに何かが隠れていないかを確認することもできます。層状の骨の奥に、ほかの動物にあって人間にはない器官があることも多いでしょうから」

偶然の発見
スミス氏らは、波長の異なる光や、別のカメラフィルター、顕微鏡を使って観察する実験も始めている。
「生命の系統樹を再構築して、(標本の)生物が時間の経過とともにどのように進化してきたのか、互いにどのような関係にあるのかを研究しています」とデイビス氏は説明する。「そのためには共通の特徴を探します。遺伝学的特徴の場合もあるし、解剖学的特徴の場合もあります」
しかし忘れてはならないのが、研究を楽しむことだとデイビス氏は語る。「発見がそうであるように、純粋に楽しむことも、科学には欠かせない要素です」
そもそも、スミス氏がこの技術を発見したのも遊び心からだった。どんな偶然の発見が大きな進展につながるかわからないと氏は言う。
次ページでも、遊び心が生んだ生きた骨格標本をご覧いただきたい。