レトロとフューチャーが同居 タイムレスな装いに

伝説の日本人モデルの山口小夜子さんがモデルで登場 (c)文化学園ファッションリソースセンター

日本人デザイナーの先駆けの1人としてパリへ飛び出したのが賢三さんでした(このページの写真はいずれも賢三さんのコレクションです)。でも、既成のパリ・モードに染まらず、オリエンタルモチーフや民族衣装といった、アンチモードの装いを持ち込み、世界を驚かせました。文化のクロスオーバーは、賢三デザインのキーコンセプトです。英国を象徴する伝統のチェック柄に、和の雰囲気を帯びた花柄をミックス。おきて破りとも映る、思い切ったモチーフの競演ですが、ビビッドな赤を共通色に据えて、全体を巧みにまとめ上げています。「花柄×チェック柄」のモチーフミックスは2021-22年秋冬でも有望なトレンドなので、着こなしの参考にしたいところです。

スカーフやヘッドピースで顔周りを飾る提案も早くから披露 (c)文化学園ファッションリソースセンター

着やすさと美しさを両立させたことも、賢三さんの際立った手腕を証明しています。アフリカやアジアの民族衣装に着想を得て、ゆったりしたフォルムで、着心地に優れたウエアを相次いで発表。無用にボディーを締め付けない装いは、パリで異彩を放っていました。今では広く支持されるようになっている、大きめサイズのオーバーシルエットは賢三さんの「遺産」ともいえるでしょう。鮮やかな色や柄で彩ることによって、華やぎをまとわせることも忘れてはいません。

帽子、スカーフ、手袋を全て異なる柄で (c)文化学園ファッションリソースセンター

賢三さんが主に活躍した1970~80年代は、ファッションが世界的に勢いづいた時代です。ポジティブで華やかだった賢三さんの作風は当時の空気を感じさせます。マルチカラーが躍る装いを取り入れれば、今の時代に欲しい元気やパワーまでもらえそう。ダイバーシティー(多様性)を先取りしていたのも、賢三さんの優れていたところ。地域、素材、性別、ムードなど、様々な要素をミックスして、オンリーワンの「賢三ワールド」を立ちのぼらせていました。既成のルールにしばられない着こなしからは、気持ちを解き放つようなエネルギーが感じ取れます。

(画像協力)
文化学園ファッションリソースセンター
https://www.bunka.ac.jp/frc/
宮田理江
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研プラス)がある。