当院では両百貨店とは異なり、ポリウレタンマスクや布マスクなど、サージカルマスク以外のマスクを着用している患者には、そのままでは受付ができないことを説明し、その場でサージカルマスクを1枚10円で買ってもらっている(そのお金は慈善団体に募金している)。苦情(クレーム)が来るかなと予想していたのだが、今のところ全員が当院の方針を理解してくれている。恐らくうまくいっている最大の理由は、西村先生のグラフがものすごく説得力があるからだろう。グラフをプリントしたもの(下図)を受付に掲示しているのだ。

図 太融寺町谷口医院内に掲示しているポスター

サージカルマスクの供給量は随分と回復していると聞く。「歴史にもしもはない」わけだが、それでも、「もしもポリウレタン製マスクでは予防できないことが周知され、屋内入場時にはサージカルマスクの着用がマナーとなり、百貨店の入り口で当院と同じ対策が実施されていたならば、集団感染は起こらなかったのではないだろうか」とまで想像してしまう。

ちなみに、当院の患者のCOVID-19の感染経路は、家庭内を除けば飲食店での感染が最も多く、外食をしていないという場合はほぼ全例がポリウレタンマスクを使用している(いた)ようだ。「発熱外来」の問診時には感染経路を尋ねる時間の余裕がなく、また患者のほとんどが最初は「感染するような所には行ってません」と言うために、それ以上は深追いせずに、報告書には「感染経路不明」と記載している。だが、後日患者が回復してから改めて尋ねると「外食しました」「外出時は(ポリ)ウレタンマスクでした」と答える者が非常に多い。

ワクチンの普及はある程度進んだところでブレーキがかかるだろうし、12歳未満への接種は開始されることになったとしても一筋縄ではいかないだろう。ならば、基本に戻って「適切なマスクの着用」をもっと社会に強調すべきではないだろうか。誰がその役割を担うべきなのか。もちろん我々医療従事者だ。当院ではこれからも、原則として「来院者全員のサージカルマスク着用義務」を続けるつもりだ。

[日経メディカル2021年9月1日付記事を再構成]※情報は掲載当時のものです。

谷口 恭さん
太融寺町谷口医院院長。1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。