拙速なアジャイル化に警鐘

「正しいアジャイルは間違ったアジャイルに比べ多くの時間や実験が必要になる」と本書はいう。「拙速なアジャイル化」こそ本書が注意深く戒める行動だ。既存の大企業で機能している官僚主義とアジャイルは対立するものではない。双方の調和をどう図っていくか、そこを丹念に見ていくのが本書の読みどころのひとつだ。最初のアジャイル拡大では企業文化の分裂に陥ったボッシュが、アジャイルチームへの経営者チームのアプローチを変えることで従来型組織と混在した組織運営を可能にした事例などが巧みに紹介されている。

最後の9章は日本語版のみの章で、日本企業の失敗パターンとその処方箋を提示する。「そもそも磨き込んで完成された組織であるが故、組織として既存のやり方から逸脱する仕組みを持たず、アジャイル変革に取り組もうとしても、それを官僚的な仕組みの中で『管理』しようとしてしまう」。イノベーションを起こす必要に迫られているビジネスパーソンなら、経営層でもミドルリーダーでも大いに参考になるはずだ。書店員によれば「出たばかりで経営書の棚の平台に展示しているだけなのに動きがよかった」という。

『ビジョナリー・カンパニーZERO』が3位

それでは先週のランキングを見ておこう。

(1)“売れる"オウンドメディアマーケティング山田秀平著(合同出版)
(2)企業価値を高める組織・人材マネジメントの思考と実践石田雅彦著(きんざい)
(3)ビジョナリー・カンパニーZEROジム・コリンズ、ビル・ラジアー著(日経BP)
(4)日経業界地図 2022年版日本経済新聞社編(日本経済新聞出版)
(5)永久保存版「知の巨人」立花隆のすべて文芸春秋特別編集(文芸春秋)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2021年8月23~29日)

1位はウェブマーケティング支援のプロがホームページやSNS(交流サイト)を活用して売り上げを伸ばすノウハウを指南する本。銀行・生保などで長く人事担当をしてきた著者による人材戦略の専門書が2位に入った。3位は前回本欄の記事「NETFLIXも熟読 『ビジョナリー・カンパニー』の原点」で紹介した『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの最新刊。4位と5位はともにムックで、新しく2022年版が出た定番の業界研究ムックが4位、4月に亡くなったノンフィクション作家、立花隆氏を特集した一冊が5位に入った。紹介したアジャイル変革の経営書は7位だった。

(水柿武志)

AX(アジャイル・トランスフォーメーション)戦略: 次世代型現場力の創造

著者 : ダレル・リグビーほか
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 3,080 円(税込み)

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