黒ダレで焼いた4種。手前からホソ(小腸)、ホホニク (コメカミ)、奥がアブシン(心臓)とアカセン(第4胃)

ホルモンの種類の多さと「コク塩」「黒ダレ」の絶品味に感服

それ以上に感動したのがマルチョウ。牛の小腸だ。ホルモンの王道ともいえる部位だが、この脂が本当に上品。口に含んでかむとうま味がジュワーと広がる。これは2切れ、2回楽しめる。なので、1切れ食べた後、もう1切れを食べるのを我慢して、ほかの部位をやっつけてから、最後にもう一度マルチョウをいく(おいしいものは最後に取って置く派です)。

ホルモン自体にほとんど味が入っていないが、モヤシの上に乗っけてくれる「コク塩」と呼ぶ塩ダレが絶品。ニンニクのすりおろしに塩ダレを混ぜたペースト状のものなのだが、肉に乗せれば、味が決まる。これだけ瓶に詰めて持って帰りたいほど。ご飯が進むタイプだ。

そして次に控えるのは「黒ダレ」シリーズ。アブシン(心臓)、ホホニク(コメカミ)、ホソ(小腸)、アカセン(第4胃)の4種だ。

鉄板の手前には「秘密の穴」があいている。塩ダレで肉を焼くとうま味のある脂がこの穴から下に置いたタレの器に落ちて、それでまたうま味を増す

黒ダレは、最初に用意してあり、鉄板の「秘密の穴」の下に置いてある。塩ダレを焼いている中、うま味のある脂が味噌ダレに落ちている。そこにある程度焼いたホルモンをインして、最後の味付けをする。タレは、やや黒く、甘味を感じる。創業の地、京都の味噌といえば白味噌だが、どちらかというと、中京地域の赤味噌を感じた。焼き手に聞いてみると、「味噌を含めて、いろいろな調味料が入っています」との回答。そりゃそうだ。はっきりは言わないよね。

最後は、シメの麺。うどんか中華麺を選べる。今回はうどんを選んだ。モヤシとキャベツ、そして麺を炒め、黒ダレで調味。最後にネギと卵をトッピングする。しょうゆが立った焼きうどんとは、一味違う感じだが、これはこれでアリ。生卵を潰しながら混ぜるとマイルドになる。うどんの量も1人前は半玉くらい。シメにちょうど良い。

店に行ってみて感じたのは、細かい気遣いにあふれていたこと。電話予約していたことを知っていて、席に着いたら、まず「おでんわ代」と書かれた袋をもらった。中身は5円玉2枚。電話代10円分と、「ご縁」があるようにという意味だろう。20年以上前に流行ったやり方だが、もらって悪い気はしないし、懐かしさも感じた。携帯電話や予約サイトが普及していなかった1990年代は、こうした配慮をする店がいっぱいあった。

電話予約のお礼に小銭をもらった
精算時にもらったタブレットケースに入った清涼剤

そして精算後の帰りがけ、「千葉」と大きく書かれたタブレットタイプの口内清涼剤をもらった。これも古くからある手法だが、客の気持ちを引き寄せるツールになることは確かだ。

で、気付いたのは、入店して、店を出るまでの時間がとても短かったこと。およそ40分ほどだっただろうか。緊急事態宣言下は酒類提供が自粛となっているので、長居する客は少ないと思うが、焼き手がそのあたりの時間コントロールをすることで、滞在時間は普通の焼き肉・ホルモン店に比べ、だいぶ短いのではないか。

コースをお得な価格設定にして、そこに注文を集中させ、多くの客を回転させる。単なる「小粋なホルモン店」ではない知恵を感じた。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)

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