現在のコロナ禍ではテレワークの機会も増えている。そこでも書く技術の重要性が増していると藤崎さんは言う。チャットツールであるSlack(スラック)などでのやりとりでは、対面と異なり表情や声のトーンなどで微妙なニュアンスを伝えることが難しい。

「スラックは気軽にコミュニケーションできるのが利点ですが、話した気になっただけで、大事なことが伝わっていなかったということも起こり得ます。メッセージを書く際にも、一つ一つの言葉をしっかり定義できているか、誰にでも正確に伝わるような論理構成ができているかが対面以上に問われるようになっています」

同社では、ロジカルシンキングや問題解決の力を段階的に育成している。新人研修で基本を学び、入社1年目の最後の研修ではピラミッド構造やMECE(ミーシー、漏れなく重複なく物事を整理する考え方)、演繹法・帰納法などを本格的に学ぶ。さらに実践力を鍛える場として設けられているのが、入社3年目の社員が全員参加する「チャレンジプロジェクト」だ。「ネットワーク」「法人営業」「サービス企画・開発」など6つの分野があり、参加者は各分野における課題と解決策を考えて自らの案を実行に移す。さらにその結果を検証し発表することが求められる。

藤崎さん自身が研修で取り組んだのは、南海トラフ地震に備えてドコモの通信の大動脈である光ファイバーがどこで切れそうかを事前に察知し、切れないように迂回させるという難しい課題だった

「4月にスタートして翌年の2月に結果を発表するまでほぼ1年がかりのプロジェクトです。先輩社員も協力者として関わることになっているので、全社的な注目度も高い。当社が求めているのは『挑戦心と行動力を兼ね備えた人材』ですが、まさにそれが同時に問われる重い課題です」

技術職の藤崎さんは、南海トラフ地震に備えてドコモの通信の大動脈である光ファイバーがどこで切れそうかを事前に察知し、切れないように迂回させるという難しい課題に取り組んだ。新入社員も3年目社員の奮闘ぶりをみながら心の準備をしていく。

「Will思考」を意識した新たな採用

「こうした機会に、論理的な思考・表現術も高めてもらえればと思いますが、大前提となるのは社員本人に何を成し遂げたいのか、どうありたいのかという強い“Will(意思)”があることです。社内では『Can思考』(何ができるかを考えること)だけでなく、『Will思考』を持つようにとよく言われるのですが、Will思考を入社段階からより強く持ってもらおうと22年卒からは採用でも新しいコースを設置しました」

それが技術系総合職で新たに設置された「Willコース」で、エントリー時に希望する分野を選択し合格した分野での配属を約束する。初年度は技術職全体の15%がWillコースでエントリーをした。「非常に優秀な学生を集めることができた」と藤崎さんは手応えを感じている。彼らを含めた内定者向けに、今年も推薦図書の選定作業が始まっている。

「良書は目先のスキルだけでなく、志=Willを育てるものなので、僕たちも一生懸命、良い本を選びたいですね」

(ライター 石臥薫子)

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

著者 : 山崎 康司
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 1,650 円(税込み)

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