仕事の合間の気分転換、あるいは一日に区切りをつける食後の一杯。そんなコーヒーのイメージが、この店では覆されてしまう。
多くのカフェが個性を競う東京・清澄白河に「KOFFEE MAMEYA-Kakeru-(コーヒーマメヤ カケル)」が開業したのは今年1月。外観は元の倉庫そのままで、ガラス張りの入り口正面には額縁舞台のような豆売りカウンターが鎮座する。その背後に30弱の客席がコの字形に並び、内側に据えた3つの作業台の周りで白衣を着たバリスタがキビキビと立ち働く。天井高く6本の柱が立つ空間は四阿(あずまや)を思わせる。
予約が基本の同店の看板商品はコース仕立てのスペシャルティコーヒーだ。焙煎(ばいせん)度合いが異なる同じ豆の飲み比べもあれば、指定した豆を様々な方法で抽出し、菓子とのペアリングを楽しむ“フルコース”もある。今回はエチオピアの豆のブレンド「ラズベリーキャンディ」を指定して「コーヒーマメヤコース」(2800円)を試してみた。
まずはキリリとした水出しコーヒー。整った酸味が甘味をまとう。水出し風にミルクで抽出した「ミルクブリュー」は口当たりまろやかで、コクはしっかり。さらにペーパーフィルターで抽出したコーヒー、ラテ、エスプレッソにスイーツ、と続く。水出しとミルクブリューにはモクテル(ノンアルコールのカクテル)も添えられる。コロナ禍で休止中だが、コーヒーを使ったカクテルもメニュー化している。
たっぷり1時間、コーヒーの多彩な表情を堪能し、飽きることがない。これは出しゃばらず、如才のないバリスタの接客に負うところも大きい。同店を運営する嗜好品研究所(東京・渋谷)代表取締役の國友栄一さんはこう話す。
「想定よりも客単価が高く、少々驚いています。お客様の8割がコースをオーダーするし、6800円のコースも注文が入る。開業初月から利益が出て、週末はフル稼働が続いています」
「コーヒーでも、三つ星レストランのような非日常を体験できる店を作りたい」。そんな國友さんの思いからカケルは生まれた。定期的にシェフやパティシエなど食のプロとコラボするイベントを開き、新しいコーヒーの味わい方も提案する。店名の「カケル」は異業種との「かけ算」を意味している。