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風のような忌野清志郎 RCブレーク前の素顔

日経エンタテインメント!

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NIKKEI STYLE

 ロックンロールの伝道者として、独自の表現スタイルや華やかな存在で多くの人を魅了した忌野清志郎。亡くなって5年を経ても、出演番組やライブ映像は今なお繰り返し放送され続けている。音楽ファンを熱狂させたばかりか、多くのアーティストに影響を与えた彼の出発点は、もちろんRCサクセション(以下、RC)だ。そのメンバーで盟友、仲井戸麗市のパートナーであり、カメラマンとして多くの写真を撮影してきたおおくぼひさこ氏の目に、希代のロックスターはどう映ったのか。

清志郎さんと初めて会ったのは、確か25歳頃、まだ仲井戸がRCに加わる前でした。神宮前の米軍ハウス風の家に共に暮らし始めた頃で、ある日仲井戸が帰宅してきた時に後についてきたのが清志郎さんでした。もしかしたら、「ごめんください」と言ったかもしれませんが、"いつの間にか居た"というのが一番ぴったりきますね。別の友達を、「この人は僕の大事な親友だ」と紹介されたこともありましたが、清志郎さんについては特に何の説明もなく。それだけ距離の近い存在だったのかもしれません。風貌は、華奢(きゃしゃ)な体におかっぱヘアでアーミーっぽい服を着ていて、「風のようなさらりとした少年」という印象でした。

その後も招いた覚えはないのですが、夕方になるとコーラの大びんを抱えて「奥さん、すみませんね~」と言いながら、しばしば訪ねてきました。それで何となく一緒に夕飯を食べたりしましたが、2人は口角泡を飛ばすというタイプではなく、「最近君どうだね」「うん。まあまあだ」というような独特のテンポ感が心地よく、眺めているのが好きでした。復活ライブ(2008年)の後、打ち上げで清志郎さんと久しぶりに会った時も、早速仲井戸と2人でくすくす、ぼそぼそやってました。かつて質問されて、「RCは少年探偵団みたいだ」と答えたことがあるんですが、時を経ても少年のまんまだなと思いました。

神宮前の家では、夜も深まるとよく2人で曲作りをしていました。2階建てにそれぞれ6畳間だけで、1階は私の事務所、2階を寝室に充てていましたが、曲作りのたびに私の仕事場を彼らに貸し出していたわけです(笑)。その頃に作られた中に『雨上がりの夜空に』もありました。

客席総立ち、写真を撮る手が止まった久保講堂ライブ

 日本語ロックの名曲として今なお愛され続ける『雨上がりの夜空に』(1980年)は多くの若者の心に響き、RCは人気バンドの地位を不動にした。それ以前より、RCと関わってきたおおくぼ氏の目にも、ブレーク直前の熱量や勢いは特別だったようだ。

(1979年に)仲井戸が正式メンバーになり、「ひさこちゃんは写真が撮れるから…」みたいな感じで、いつの間にかRCの写真班になっていました。シングル『ステップ!』のジャケットは、清志郎さんが赤のコンポラ・スーツ(コンテンポラリー・スーツ)が着たいというのがはじまり。既成でもスーツを探しましたが、サム・クックが着るようなあんな服は売ってるはずもなく、私が婦人誌の編集の方に相談してテーラーを紹介してもらいました。家から近かったので仲井戸の運転で清志郎さん、スタイリストさん、私の4人で行きました。清志郎さんは採寸されている時は棒みたいにまっすぐで、その固まっている感じを面白がりつつ私たちは興味津々に眺めていました。

ライブ中は皆さんもご存じのように、飛んだり跳ねたり走ったりとすごく動き回る人なのでカメラに収めるのが大変でした。特に印象的だったのは久保講堂のライブ(1980年)です。歓声があまりにすごいので、客席を見たら総立ちで。その前に渋谷の屋根裏などの動員を塗り替えたりと、ライブハウスでは盛り上がっていましたが、ホールのワンマンではそんなこと初めて。その光景に感動して、一瞬写真を撮る手が止まったほどです。積み重ねてきたものが実を結び始めているなと思い、身震いしましたね。

撮影中、スタジオでは特にですが、男っぽく決めようとしない、格好つけない。だからといって、素ではない、独特の間を感じさせる人でした。私は素のままでは写真にならないと考えているので、そのふとした瞬間の強さみたいなものを撮りたいと思っていました。ただ、そこに行き着くまでが長い(笑)。清志郎さんに限らず、RCはみんなそうでしたね。

『RHAPSODY』の撮影も、最初は何となくグダグダしていて、それがだんだんと煮詰まっていくように密度が濃くなり、最後にはあるポイントに集中して写真として成立する。今のアーティストの方のように決まるポーズを取らないから、5人全員が決まるポイントは本当に少ない。ですから、結構な時間と枚数をかけて撮る必要がありますし、しかもOKと言えるものはわずか3カットのことも…。デジタルでない時代だから「撮れたはず」という自分の感覚だけが頼りでした。

詩集『エリーゼのために』の著者近影では和装でしたが、清志郎さんの言葉は本当にすばらしいのでいつかああいった写真を撮りたいと思っていました。清志郎さんは「芥川龍之介だ~」って言ったりして、楽しそうでした。

話し言葉は普通でしたが、使い方がちょっと面白いんです。写真を見せても独特な抑揚で「いいじゃないかっ」って。照れているのか、それとも優しさで曖昧に表現したのか私には分かりませんが。ご飯を食べるかどうするかを聞いても、「そうする?」って感じで、どっちなのか分からないことも多かった。RCはみんなそんな感じでしたね。

仲井戸麗市との結婚式に大きなトロフィー

 1991年以降、RCは活動休止になるが、1994年の清志郎と仲井戸によるライブ盤『GLAD ALL OVER』など、公私にわたり交流は続いた。プライベートを含め旧知の仲だからこそ、おおくぼ氏の披露してくれるエピソードからは、清志郎の人物像が伝わってくる。

私たちが正式に結婚することは、清志郎さんにとってはショックだったみたいです(笑)。式と披露宴の当日、夜は関係者を招いたパーティーを開きましたが、(仲井戸が参加する前の)RCのメンバーも来てくれました。清志郎さんも私たちに向けての言葉を贈ってくれたんですが、「プレゼントだ」と言ってまず大きなトロフィーをくれました。大相撲で横綱が優勝したときに授与されるような大きなやつを。それにゴルフや野球やいろんなスポーツの優勝の刻印やらマークやらが入っていましたね。かと思えば、来賓の演奏のときには、RCの3人は延々と演奏して歌い続けるんです。私の関係者は彼らを全く知らないので、後からスナップを見るとみんなあきれて疲れた顔をしてました(笑)。

なんていうか、清志郎さんは物事に真正面よりも、斜めから行きたがるところがありました。社会正義とか大げさなことではなく、「ちょっと騒ぎになる」のが好きだったのかなと私は思っています。だからテレビに出ていろいろと"騒動"を巻き起こした時も、全然不思議には思いませんでした。

そういった生き方のチャーミングさに多くの人は魅せられたのでしょうね。楽曲もすばらしいし、ステージでの立ち居振る舞いなどを見れば、口ではいろいろ言っていても本当は優しいんだって分かる。そう言われることを清志郎さんは嫌がるかもしれないけど、そう思っちゃう魅力がにじみ出ていましたよね。だからこそ亡くなるのが早過ぎたことは、本当に残念です。

(亡くなった後に)いろんな依頼があって、清志郎さんの写真を何度も見るようになりました。苦しさやいろんな思いがありましたが、それでもやはり清志郎さんの写真を見ると、「きれいだな」と思いました。最初に会った時の風のような、少年のようなあの感じ。メイクや髪形が変わっても、"風みたいなきれいな清志ちゃん"というのは底辺にずっとあったし、私の場合はその印象がずっと続いていますね。

おおくぼひさこ
写真家。東京生まれ。青山学院大学時代、写真研究部に籍を置く。卒業と同時に管洋志氏に師事。1985年写真事務所「プラステン」を設立。夫はRCサクセションのギタリスト、仲井戸麗市。RCのジャケットやツアー写真をはじめ、多くの音楽アーティストを撮影。

(ライター 橘川有子)

[日経エンタテインメント! 2014年8月号の記事を基に再構成]

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