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デンシバ Spotlight

後絶たぬ品質・データ偽装 企業風土の改革が不可欠

2021/8/29

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三菱電機では品質に関わる不正が相次いだ
三菱電機では品質に関わる不正が相次いだ

三菱電機で鉄道車両向け部品の検査不正が明らかになりました。品質・データ偽装は2015~18年にかけて相次ぎ、一時は収まったように見えましたが、産業界全体としてまだまだ断ち切れていないようです。背景に何があるのでしょうか。

「三菱電機の不祥事は氷山の一角。一切、品質不正がないと自信を持って言い切れる企業はないのではないか」。品質不正に詳しいプロアクト法律事務所の竹内朗弁護士は製造現場はどこでも品質不正のリスクを抱えていると指摘します。納期、生産計画、収益――。様々なプレッシャーが製造現場に押し寄せ、品質・仕様が条件を満たさないのに製品を出荷してしまうのが品質・データ偽装です。

特徴は「本社から見えにくい子会社や、傍流部門で発生すること」(国広総合法律事務所の国広正弁護士)。三菱電機では30年以上にわたり鉄道車両用部品で不正が続いていました。空調機器でも新たに不正が見つかり、他の事業部門にも火の手が広がりそうな雲行きです。

「会社のため」「顧客のため」といった独善的な理由づけを当事者が行うのも品質不正の特徴です。危機管理の世界では不正の発生条件には「動機」「機会」「正当化」の3つがあるとされます。プレッシャーから逃れたい「動機」を持ち、会社のため仕方なくといった「正当化」によって不正に走る。過去の事例を見てもこの1つ、またはどれかが重なって不正が起こっています。

不正の「機会」になっているのが製造現場での硬直的な人事です。不正は本社から目が届きにくい部署で、特定の人物に一つの業務を長く続けさせる場合に起こるケースが大半。「人事ローテーションを頻繁に行うことが不正防止に役立つ」と専門家は口をそろえます。

三菱電機の杉山社長(当時)は記者会見で深々と頭を下げた

不正が発覚すると株価下落や損害賠償の支払いなど会社はダメージを負います。「現場はそこまで目が向かない。教育・研修などで不正がいけないことを繰り返し教え込むことが必要」と森・浜田松本法律事務所の山内洋嗣弁護士は強調します。

対策は製造現場にとどまりません。品質をチェックする品質保証部門の改革も必要です。品質保証部門は一般に、会社の収益に直接貢献しないとして社内序列が低く、発言力が弱いとされます。「組織的な独立性を確保して製造部門へのけん制力を高める体制作りも併せて必要」(竹内弁護士)です。

最も難しいのが生産・納期優先の企業風土の改革です。経営コンサルティングのプロティビティ(東京・千代田)の神林比洋雄氏は、トップが「『これだけはやってくれるな』『不正は絶対に許さない』といった強いメッセージを発信することが社員の意識改革に有効」と指摘します。

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山内洋嗣弁護士「製造現場だけの問題ではない」