太陽系起源の謎 解明のカギ握る小天体へ探査続々

2021/9/5
ナショナルジオグラフィック日本版

米ロッキード・マーチンの施設で、米航空宇宙局(NASA)の探査機ルーシーの太陽電池アレイを広げるテストが行われる。2021年10月に打ち上げ予定のルーシーは12年かけて、木星とともに公転する太古の小惑星群「トロヤ群」を調べる。太陽系の誕生直後の姿を知る手がかりが得られるかもしれない(PATRICK H. CORKERY, LOCKHEED MARTIN)

観測や探査の技術が進歩し、太陽系に散らばる小惑星や彗星(すいせい)の知られざる姿が明らかになってきた。こうした小さな天体は太陽系の成り立ちや生命の起源を探る手がかりを与えてくれる。ナショナル ジオグラフィック9月号では、なぜ小天体探査が重視されているのか、その意義を解説する。

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私たちが学校で習った太陽系の姿は論理的な整合性があるように見える。だが天文学者や惑星科学者たちは何十年も前から、何かが見落とされているのではないかと考えてきた。これまでのモデルでは、天王星と海王星が今の軌道上に形成されたことをうまく説明できないからだ。ほかの惑星系にはよくあるタイプの惑星が太陽系には欠けているようにも見える。さらに、2021年現在、生命を宿していることがわかっている天体は地球だけだ。

太陽系はどのようにして今の姿になったのか。そして、生命はどのようにして生まれたのか。

その答えを求めて研究者が熱いまなざしを向けているのが「小天体」だ。惑星、準惑星、衛星を除いて、太陽の周りを公転しているすべての天体がそれに当てはまる。長年、小天体は惑星の形成過程で取り残された残骸と見なされてきた。しかし、多くの小天体はタイムカプセルのようなもので、太陽の誕生時からほとんど変化していない。原初の姿をとどめた天体を継続的に観測し、探査機を送り込んで試料を採取すれば、生命の起源に迫れるかもしれない。うまくいけば、小天体の衝突で文明が滅ぼされる事態を回避する技術も確立できそうだ。

この分野の進展を間近に見てきた一人が、天文学者のマイク・ブラウン氏だ。ブラウン氏らは02年、米国カリフォルニア州のパロマー天文台にある口径1.2メートルの望遠鏡に大型のデジタルカメラを設置し、太陽系の外縁部「カイパーベルト」を観測した。それまでこの領域では数百個の天体しか見つかっていなかったが、もっと多くの天体があるはずだと考えたのだ。収穫は期待以上だった。「まるで空から新発見が降ってくるようでした」とブラウンは言う。

ブラウン氏が発見した天体のなかには、少なくとも冥王星の半分の大きさのものが3個あったほか、エリスと名づけられた天体は冥王星より質量が大きかった。こうした発見を受けて、国際天文学連合は06年、新たに「準惑星」というカテゴリーを設け、冥王星もそこに分類された。その後の15年で、海王星よりも外側に位置する天体がさらに多く見つかり、それらが実に多様な軌道を描いて太陽の周りを回っていることもわかった。

太陽系の外縁部には安定した軌道をもつ天体もあり、それらは現在の位置で形成されたと考えられる。加えて、海王星の重力で外側にはじき飛ばされた天体もあり、太陽から遠く離れた極端に細長い軌道を描いて公転する珍しい天体も少数見つかっている。これらの天体には既知の惑星の重力は働いていないようだ。

こうした「孤立した」小天体はとても奇妙な振る舞いをするため、太陽から何百億キロも離れた場所に地球の何倍も重い未知の惑星があって、これらの小天体を引き寄せているのではないかと、ブラウン氏や一部の天文学者はみている。

とはいえ、どれだけ優れた望遠鏡を使っても、得られる情報は限られている。ジグソーパズルの欠けたピースを埋めるには、まず小天体のかけらを地球に持ち帰る必要があった。

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