麺屋周郷のメニューは1本化され、つけ麺のみだ

スープは、店主が厳選した豚・鶏・魚介素材(5種類)のうま味を過不足なく凝縮した絶品。素材を圧力寸胴で一気に炊き上げ、別採りした鶏油、魚介の香りを、絶妙なバランス感覚で重ね合わせ、カエシの上質な風味に、等身大の素材の風味をオンした会心の出来栄えといっていい。一度口にしたら最後、レンゲを持つ手が止まらない。

トッピングにも光るこだわり

スープと合わせる麺は、名門『菅野製麺所』(東京・大田)と共同開発した、福岡県産小麦100%の太ストレート。箸で摘まみ上げた瞬間から小麦の芳香が茫洋と立ち上る。自己主張しながらも、スープの持ち味はしっかりと引き立て「このスープにして、この麺あり」の傑作といえる。

トッピングにも、こだわりが光る。例えば、3種類のチャーシュー。いずれも用いる香草を変え、全く異なる味わいを演出。豚ロースと豚バラは提供前に炙りを加え、うま味を極大化。単品の「つまみ」として提供されても、十分楽しめるほどの逸品だ。

「より良いものとなるよう吟味を重ね、改善すべき点があれば、ためらうことなく改善していきたい」。オープンから日が浅いにもかかわらず、ラーメンと向き合う店主の真摯な姿勢に惹かれ、同店には訪問客が絶えない。遠からぬうちに新橋の代表店のひとつに躍り出ることはおそらく間違いない。

東京・北府中に今年、開業した「中華蕎麦ひら井」(画像の一部を加工)

◎中華蕎麦ひら井(北府中)

~本年最大級の大型新店!濃厚シーンを復権へと導く「つけ蕎麦」は規格外の完成度~

次にご紹介するのは今年5月、東京都府中市に誕生した『中華蕎麦ひら井』。

最寄り駅であるJR武蔵野線北府中駅から徒歩15分ほど(約1.2km)の場所にある。少しばかり距離があるように思われるが、実際に足を運んだ人で、それに苦言を呈する人は私の周りにはいない。なぜなら同店が紡ぎ出す1杯が、道中の苦労を帳消しにして余りあるクオリティを保持しているからに他ならない。

同店の店主、上野竜一氏は大学時代からG系(ガッツリ系)ラーメンの実力店などで働いた経験がある。その後、香川県内の小型製麺機のトップメーカー『大和製作所』の社員を経て、元いた店へと戻り、作り手として腕を磨き続けてきた逸材だ。

そんな経歴の持ち主が今般、満を持して開業した。ラーメン好きが黙って見ているはずもなく、オープン当初から、雨が降ろうが風が吹こうが行列が途切れない人気を誇っている。

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「うまみの大三角形」を構築