パナの新「ラムダッシュ」好調 在宅で伸びたひげ対応

テレワークの普及によってひげをそる間隔が延びたビジネスパーソンは多いようだ。ところが長いひげを苦手とする電気シェーバーでは、なかなかそれずにイライラすることになる。こうした課題の解決に挑んだのがパナソニックだ。
パナソニックが10年ぶりにフルモデルチェンジした電気シェーバー「ラムダッシュ」のフラッグシップシリーズが、好調な滑り出しを見せている。需要の変化をとらえて、ビジネスパーソンの悩みを解消する改良を加えた点が評価され、当初3機種合計で販売計画1万台と見積もっていたが、「2021年6月に発売してから、1.5倍超の販売台数で推移。7月もその勢いは続いている」(パナソニック)。
新ラムダッシュは、3タイプをラインアップする。全自動洗浄充電器が付属する「ES-LS9AX」(実勢価格5万9400円・税込み、以下同)は、風呂でも使える上位グレード。全自動洗浄充電器付きで、バッテリーがなくなってもケーブルをコンセントに挿すと使えるのが「ES-LS9N」(実勢価格は4万5140円)。全自動洗浄充電器を省くなどした下位グレードの「ES-LS5A」は実勢価格は3万6600円だ。

国内電気シェーバー市場は、ここ数年は年間660万台前後で推移している。最近は各社がイノベーティブな新技術の搭載機種を相次ぎ投入する状況ではなく、成熟しているとの見方が強い。しかしながら、新型コロナウイルス禍によって出社頻度が少なくなり、ビジネスパーソンが習慣として必ずしも毎日ひげをそるわけではなくなるという環境の変化が起こった。同社調べによると、ひげを3日に1回そる人はコロナ禍前に比べて2倍に増えている。
こうした環境の変化をいち早く捉えて、出社しなければならない日に長いひげを短時間でそりたいと考える今どきのビジネスパーソンの要望を、機能として落とし込んだところに、ラムダッシュ好調の要因がある。刃の数を従来の5枚から6枚に増やし、うち2枚の「アゴ下トリマー刃」と呼ぶ、あご下ひげ専用の刃が、長く伸びたくせひげを深ぞりしやすくしたのだ。
使ってみたところ、特に喉仏周りが快適に
なぜ6枚刃のラムダッシュは、長いひげをそりやすいのか。そもそも外刃でとりこんで内刃でひげをカットする構造上、電気シェーバーは長いひげは得意ではない。特にあご下はくせ毛が多くそりにくい場所であり、伸びると毎日そっていたころよりも時間がかかりやすい。新設したアゴ下トリマー刃は、長いくせ毛を立たせて短くプレカットしやすくする設計なのだ。
具体的には、他の刃は横から見ると小さな穴が空いた外刃が弧を描くような曲線を描いているのに対し、くせヒゲリフト刃はフラット形状をしている。上下に細かなくしが付いており、このくしでくせ毛を立たせるわけだ。

プレカットによりある程度短くした結果、他の刃で扱いやすくなる。寝たひげをすくい上げる厚さ60マイクロメートルの「くせヒゲリフト刃」(内側の2枚)、それ以外の大半のひげをカットする厚さ41マイクロメートルの「フィニッシュ刃」(外側の2枚)が、深ぞりする。6枚刃の採用により、1回のストロークで長いくせ毛をカットできる割合は、モデルチェンジ前の5枚刃と比べて4倍に高まったという。
うたい文句通りの実力を発揮できるものなのか、実際にそこそこひげが濃い筆者が試してみた。1週間ほどひげを伸ばした状態でスイッチをオン。普段から使っている電気シェーバーと比べてみると、確かに1回のストロークでじょりじょりとカットされる様子が体験できた。
特に差を感じたのが喉仏周り。いつも何度ストロークしてもそり残しが生じることが気になっていたが、少ないストローク回数で、手で触ってもひげの存在が分からないレベルまできれいにそれた。
カミソリ負けしづらいというメリットも
テスト前は、6枚刃ゆえの大型ヘッドで肌への密着度が低いのではないか危惧していた。しかしこれも、杞憂(きゆう)だった。「密着5Dヘッド」と呼ぶ5方向にヘッド全体が動く仕組みのおかげで、角度のあるあご下でもヘッドがピタッと肌に吸い付くような状態で動かすことができた。
密着5Dヘッドは、上下方向に2.5ミリメートル、前後方向に1ミリメートル動くうえに、角度も前後で17度、左右で20度変えられ、さらにヘッドを上から見たときに時計周りおよび半時計回りに10度の角度でツイストも可能。可動域を大きくすることで、密着度を高めている。

ヘッドの大型化は、結果として肌への負担を減らす効果も生んでいる。肌接触面積が広がると1カ所にかかる圧力が減るためで、パナソニックは5枚刃より圧力が10%低減するとしている。
また高速リニアモーターの駆動スピードを、同社としては過去最高の毎分約1万4000ストロークまで高めたことも一役買っている。スパっと短時間でひげをカットしやすいので、ヘッドを往復させる回数が少なく済む。カミソリ負けを起こしにくく、筆者がテストした範囲でもヒリヒリすることはなかった。
電気シェーバーを旅先にもよく持参する筆者にとって、ありがたいと感じる気配りもある。ES-LS9AXに付属する持ち運びケースがそれ。ケース自体の下部にUSB-C端子があり、本体をしまったままでケーブルをスマホ充電器などにつなげば充電できるのだ。競合製品の場合、専用の充電ケーブルを持ち運び、本体を裸の状態にして充電することが多い。旅行先のホテルの洗面台にぽんとケースのまま置いておき、バッテリーがなくなったらスマホ用の充電器を持ってきて壁のコンセントに挿せるのは便利だ。

価格相応に高級感のあるデザインについても、好印象を持った。ブラウンやフィリップスの最上位クラスはシルバーを基調としているが、真っ向勝負するように6枚刃の新ラムダッシュはクラフトブラックと呼ぶ黒色を採用する。プラスチックの外装にありがちな安っぽい光沢も抑えてあり、マットに仕上げている。液晶部に縁取りがなく、本体を手に持つと自然に電池残量などの表示が浮かび上がるギミックもある。ちょっとしたポイントだが、デジタルガジェット好きの所有欲をそそるのではないだろうか。

(フリーライター 戸井田満樹)
[日経クロストレンド 2021年8月3日の記事を再構成]
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