3本足で生き抜く希望のライオン 密猟の脅威は続く

ナショナルジオグラフィック日本版

ウガンダのクイーン・エリザベス国立公園にある、大きなイチジクの木の上で休むジェイコブ。この公園にすむライオンの間では、木登りの文化がさかんだ。この写真は、ジェイコブが足を失う前の2018年に撮影されたものだが、3本足になった今でも木登りはできるそうだ(PHOTOGRAPH BY ALEX BRACZKOWSKI)

アフリカライオンのジェイコブは、わなにかかったり、毒殺されそうになったり、角で突かれたりして、これまでに4度も死にそうな目に遭ってきた。普通のライオンだったらとっくに命を落としていただろう。

6歳のジェイコブは、東アフリカのウガンダにあるクイーン・エリザベス国立公園にすみ、木登りをするライオンとして知られている。時折、群れの仲間と一緒に、隣接しているビルンガ国立公園(コンゴ民主共和国)まで足を延ばす。2020年8月、そのビルンガでジェイコブは片方の足をわなに挟まれ、切断されてしまった。

20年8月、ジェイコブは再びわなに挟まれて足を失った。ウガンダ保護基金の獣医ムスタファ・ンスブガ氏がジェイコブの切断された足を持ち上げている。ンスブガ氏、エリック・エニエル氏、バジル・アリドリア氏などが何度も治療を行ったおかげで、今はすっかり回復し、3本足で生きている(PHOTOGRAPHS COURTESY OF KABUNZUNGWIRE MORIS AND MUSTAFA NSUBUGA)

ジェイコブは、ウガンダ野生生物局の獣医らによって何度も処置を受け、次第に3本の足で歩くことを学び、群れと一緒に狩りをするまでに回復した。それ以来、少なくとも1頭のメスと交尾する姿も見られたと、ライオン研究者のアレックス・ブラズコウスキ氏は言う。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるブラズコウスキ氏は21年2月に、クイーン・エリザベス国立公園でジェイコブの姿を撮影した。

足をけがをしてから約5カ月後の21年2月初め、クイーン・エリザベス国立公園を歩くジェイコブ。この頃までにはジェイコブの足のけがは回復し、仲間のライオンたちに後れを取ることなく、狩りの助けもできるようになった(PHOTOGRAPH BY ALEX BRACZKOWSKI)

ジェイコブの回復ぶりは、多くの人に希望を与えてくれる。ブラズコウスキ氏は8月10日の「世界ライオンの日」にちなんで、そう語った。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー・アット・ラージであるデレック・ジュベール氏とビバリー・ジュベール氏によって、13年に制定された記念日だ。

「生き続けるチャンスが半分でも与えられれば、なんとか生きていけるという姿を見せてくれているようで、胸を打たれました。素晴らしいことです」

しかし同時に、ジェイコブに降りかかった不幸は、種としてのライオンが直面している深刻な脅威の一面を浮き彫りにしている。

野生のライオンの数は残りわずか2万頭ほどで、国際自然保護連合(IUCN)はライオンを危急種(Vulnerable)に指定している。密猟者たちは、以前にもましてアフリカのライオンを標的にするようになった。ネコ科動物の世界的な保護団体「パンセラ」でライオン保護プログラムのディレクターを務めるポール・ファンストン氏によると、ライオンの歯や爪、骨は、東南アジアや、アフリカの一部の地域で、薬やステータスシンボルとして重宝されているという。

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