クライミングのチョーク ブームの影で自然や景観壊す

ナショナルジオグラフィック日本版

チョークの跡をたどって岩を登るクライマー。スペインのカナリア諸島の一つ、テネリフェ島にあるクライミングスポット、アリコにて(PHOTOGRAPH BY OLE SPATA, VISUM/REDUX)

東京オリンピックで人工の壁を登る「スポーツクライミング」が競技種目に加わり、かつて一部のマニアのみのスポーツだったロッククライミングが今、新たな脚光を浴びている。

だが、ロッククライミングや、そこから派生したボルダリング(ロープやハーネスを使わずに比較的低い岩や人工の壁を登るスポーツ)の人気が高まるにつれて、こういったスポーツに欠かせないチョークによる環境への悪影響が懸念されるようになっている。

米国では、チョークの跡がひどくなるにつれて、その使用を制限する場所が現れ始めた。ユタ州のアーチーズ国立公園では、岩の色に近い色付きチョークのみが許可されている。一方、コロラド州のガーデン・オブ・ザ・ゴッズ国立自然ランドマークでは、チョークとその代替品の利用が一切禁じられている。アメリカ先住民の人々も、先住民の管理下にある地域へのクライマーの立ち入りを禁止すると宣言した。これには、チョークが景観を損なうことに加え、宗教的に重要な場所を守るためでもある。

クライミング用チョークの原料は炭酸マグネシウムで、体操や重量挙げの選手が鉄棒やバーベルを握るときに使うのと同じものだ。ロッククライミングでチョークが使われるようになったのは1950年代のことで、初めて使ったのは、学生時代に体操を行っており、のちにボルダリングに転向したジョン・ギル氏だった。

それ以降、手を乾燥させて摩擦を調整できるチョークは、プロ、アマを問わず好んで使われるようになった。チョークはきれいにするのがマナーになっているとはいえ、今では世界中の岩壁にチョークの跡が残される事態になっている。

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チョークが環境に及ぼす影響
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