ホテル仕様のスイーツはホールだからこそ安い

三笠会館の製菓長などを務めた後に開業、チーフパティシエの藤堂さん

現金以外の電子マネーもOKだ。しかし、その安さに仰天する。5号(直径15センチ・約6カット分)のホールケーキが1台1600~2200円(「バスクチーズケーキ」のみ3000円)、定価の4割減~半額ほどだ。一体、この安さの秘密は何なのか。

「僕は色々な企業のスイーツの商品開発や監修を務めるほか、都内の有名ホテルやレストラン、劇場内の喫茶室にOEM(相手先ブランドによる製造)でケーキを製造し、卸しています。最初は、企業向け商品の試作のための工房を自宅に作ったのですが、周りはみんな顔なじみばかり。下町のよしみで『余ったケーキを分けて』と言われ、少量ずつ販売したのが始まりです」(藤堂さん)

藤堂さんいわく、同店でケーキに使う材料やレシピは一流ホテルやスイーツショップと変わらないが、安さの秘密は「ホールケーキにこだわっていること」にあるという。一般的なスイーツ店で扱っているのは「一人分の小さなケーキ」だが、これにはホールケーキをカットし、デコレーションやセロハンなどの包装を個別に施し、繁華街に店を構え、ウインドーに美しく並べ、数人の販売スタッフが店に立ち……と1個のケーキを売るために、大変な手間と人件費がかけられている。

しかし藤堂プランニングで販売するのはホールケーキのみ。そして自分の所有地で、ケーキを作った職人が手売りするので家賃や余分な人件費も不要。また天候や日によって製造量を決定するため「売り切れ御免」でロスも出ない。なるほど、すごいビジネスだ。

ホールケーキを求めて、全国から客が訪れる

藤堂さんが07年に工房を作ってから、ユニークな店構えと圧倒的なコスパの良さで、瞬く間にメディアが取り上げ有名になった。地元はもちろん、北海道や関西からも客が買いに来る。知人に頼まれ一人で1万円以上使う客もいるそうだ。取材中も性別や世代問わずひっきりなしに客が訪れていた。コロナ禍の中だが、もともと客の滞在時間も短く、密になりにくい環境で今のところ影響はないようだ(一方、藤堂さんの取引先のホテルやレストランは大打撃を受け困っているそうだが……)。

以上、清澄白河の工場直売スイーツ専門店2店を紹介した。

取材後、持ち帰ったスイーツは自宅でゆっくり堪能。京橋千疋屋のババロアやプリンは旬のフルーツの爽やかな甘さとつるっとなめらかな食感がなんとも美味。藤堂プランニングではケーキを2台購入。チーズスフレは甘酢っぱい生地が口の中でシュワっと溶けるクラシックで懐かしい味、タルトははっさくとクリーム、歯応えのあるタルト生地が組み合わさり食べ応え抜群。ひとときの優雅なコーヒータイムを楽しんだ。

2年越しのステイホームの夏もまもなく終わる。清澄白河でコーヒーとアート、そして持ち帰りスイーツを楽しんではいかがだろうか。両店とも年中無休、年末年始も営業している。

(フードライター 浅野陽子)

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