人生の悩みに朝活 時間・リスク・人間関係をチェック
ニューノーマルを生き抜く 「朝1時間」活用塾(6)
早起きして様々な活動をすることが「朝活」と呼ばれるようになって10年以上たちました。朝の時間を活用すると、仕事とプライベートの活動のどちらにエネルギーを費やすべきかなど、決断に時間がかかることもスッキリ優先順位をつけることができます。今回は未婚女性に多くみられる次のような悩みの解決法について解説します。
A. 今、自分がどこに力を入れるかの優先順位づけは、自分がどの「志向」を持っているかによって大きく変わります。そこを朝活で深めてみてはいかがでしょうか。
最適な優先順位づけは「朝活」で身につけることができる
仕事で結果を出したい、今が勝負どきだ。でも、婚活も子供が産める年齢を考えると、同じく今が勝負どき。どれが大事かなんて、とても選べない……。このように、同じ土俵で比べることができない「大切なこと」に優先順位をつけるのはとても難しいことです。
婚活に限らず、出世することでプライベートの時間が減ってしまうと考えたり、昇進の打診があっても「自分には荷が重い」と引き受けるのをちゅうちょしたりと、仕事とプライベートの区分けに悩む人は多いです。
人生に関わる大きな決断に迫られている人にこそ「朝1時間」の活用をおすすめします。理由があります。普段よりも1時間早起きしようとすると、おのずと日々の時間の使い方を見直し、優先順位をつけざるを得ない状態になるからです。大きな決断の正否は実は、日々の小さな決断の積み重ねにあります。自分は何を大切に思っていて、どんな人生を歩みたいのか。それを見極められるかどうかは、「とりあえず」「念のため」となんとなくやり過ごしている日々の小さなことを「本当に必要かな?」の視点で見直し、どの時間をやめ、どの時間を作るかにかかっています。
また、冒頭のような「婚活か仕事か、どちらに力を入れるべきか」といった人生の岐路に関わるような大きな選択は、決めるのに時間がかかるのでつい考えることを後回しにしがちです。「たっぷり時間があるときに考えよう」と思っているうちに時間はどんどん過ぎてしまいます。
夜考えようと思っても、日々の疲れがたまっていると面倒になってきてしまいますし、疲れた頭で考えると「私には『仕事も結婚も』なんて無理なんじゃないか」といったようなネガティブな考えに襲われることもあります。朝、業務に取り掛かる前の1時間を、誰にも邪魔されない自分だけのゴールデンタイムと位置づけましょう。本当はしっかり考えなければいけないけれど、後回しにしていたことを「朝1時間」で考えることができれば、時系列順、思いついた順、言われた順、期待に応える順に物事を進めてしまう悩みともサヨナラできます。
「朝1時間」で自分の志向をチェックしてみよう
では、「朝1時間」を具体的にどう使えばよいでしょうか。今回提案するのは「時間×リスク許容度+人間関係」の軸で、今のあなたはどういう働き方を望んでいるのかを知る方法です。
次に示す図は「時間×リスク許容度+人間関係」を図にしたものです。横軸が時間に対する許容度(オンオフの境目をきっちりしたいか、そうでないか)、縦軸がリスク許容度(多少のリスクがあってもいいか、安全安心がいいか)です。ブルーの背景の3つの型(個人主義型・チームプレー型・臨機応変型)は、仕事における人間関係のスタンスを示しています。
この図では、自分の志向を大きく4つに分けています。それぞれの大まかな特徴は次のようなものです。
・ワーク&プライベート志向:業務時間中は頑張るが、業務時間外は仕事に充てたくない。自分の趣味や好きなことに時間を使いたい
・ワーク&セカンドジョブ志向:業務時間を過ぎたあと、他の仕事をすることに抵抗はない/今の仕事でのスキルが他で通用するか試してみたい
・ワーク&インベスト志向:大きな目標のためなら一時的に収入減になってもいい/最小の努力で最大の効果を得たい
自分の「志向」がわかると、ロールモデルもブレない
今回紹介した方法で自分がどういう人生を送りたいか、どんな状態のときに幸せを感じるかを見極めることができると、同じ「志向」の人がどのような活動をしているかがわかるので、ロールモデルを見つけやすくなります。
例えば冒頭の「仕事か婚活か」悩んでいる方は、仕事に集中しすぎて婚活の時期を逃した方を多く見てきたり、結婚した途端に仕事をペースダウンせざるを得なかった方を多く見てきたりしたせいで「仕事も婚活も」を実現できる人はいないと思い込んでいる可能性があります。しかし、「仕事も婚活も」を実現している人は多くいます。
自分の「志向」を知っておくと、「スーパーウーマンだけがそんなことができる」と思い込んで自分の選択肢を狭めることなく、自分の志向と合った考えのもとで理想を実現している人を探しやすくなります。また、婚活する際も自分の志向を明確化しておくと、「これだけは譲れない」ポイントがわかるため、理想のパートナーを探しやすくなるメリットもあります。
なお、この「志向」は、結婚、出産、子育て、親の介護など、ライフステージによって変わりますので、この結果がずっと続くわけではありません。ひとつの「志向」に軸足を起き、もうひとつの足を他の「志向」に置くことも可能です。例えば今は子育てに集中したいので「ワーク&プライベート」志向だけど、いずれは「ワーク&セカンドジョブ志向」で行きたい、と、将来を戦略的に見越して活動することもできます。
自分の「志向」を知る簡易チェックシートはこちら
自分が今どの志向でいるのかは、次の簡易チェックシートで簡易的に判断できます。チェックが入った項目の数が一番多かった志向が、今のあなたです。この機会にチェックしてみてください。
□自分の時間の全てを仕事に充ててもいいくらい、いつも仕事のことを考えている
□とにかく仕事が好きで、はまると夢中になり時間を忘れる
□会社で結果を出してお金を稼ぎたい
□仲間と一緒に何かを成し遂げたい
□会社の目標と自分の目標を同じように考えることができる
□仕事で結果を出すための勉強の時間は惜しまない
□業務時間中は頑張るが、業務時間外は仕事に充てたくない
□業務時間内であれば、言われたことを言われた通りにすることに抵抗はない
□自分の趣味や好きなことに時間を使いたい
□家族の生活を犠牲にするような働き方はしたくない
□自分の貯金は減らしたくない
□どちらかというと、お金より自分の自由な時間がほしい
□業務時間を過ぎたあと、他の仕事をすることに抵抗はない
□仕事で成長するためには異分野の経験が必要だ
□今の仕事でのスキルが他で通用するか試してみたい
□今の会社で「井の中の蛙(かわず)」になることに危機感を感じている
□多面的に物事を知りたい
□異業種・異分野の人と交流するのが楽しい
□自分の時間の全てを仕事に充てることはしたくない
□時間や場所やお金にしばられたくない
□大きな目標のためならお金を一時的に失ってもいい
□自分の好きなようにやりたい
□気に入った仲間としか仕事はしたくない
□最小の努力で最大の効果を得たい
迷いが消えた朝キャリメンバーの事例紹介
筆者が主宰する「攻めの朝活」コミュニティー「朝キャリ」メンバーの佐藤美樹さん(仮名)は、医療関連メーカーの会社に新卒から勤めて、現在管理職として働いています。佐藤さんがイメージするリーダー像は当初、ぐいぐいと部下を引っ張っていき、目標にまい進するタイプでした。佐藤さん自身はもともとリーダーとしてぐいぐい引っ張るタイプではなく、そんな自分が管理職になることに抵抗があり、現場で体を動かすことの方が性に合っていると考えていました。
そのため、管理職になってもプレーヤーで一作業者という姿勢から脱却できず、本来部下がすべきワーカーの仕事をやりつつその上管理業務も行うことになり仕事は増えていく一方でした。新卒からの会社のスキルしかなく、つぶしが利かないのではないかということも不安要素のひとつで、自信をもって自分をアピールできないことに漠然とした不安を感じていました。
そこで今回紹介した方法で朝の時間に自分の志向を見直したところ、自分の予測では「ワーク&プライベート志向」だと思っていたのに「ワーク&ワーク志向」であったことに気づきました。
その結果、漠然とした不安から外の環境に自分の居場所を探すより、今の仕事で自分と組織を成長させ、最終的に社外に通用するようなスキルを身につけようと覚悟が決まりました。朝時間を理想の管理職像を調査したり、専門知識を習得したり、マネジメントスキル向上の時間に充て、次のような考えで目標にまい進中です。
・ぐいぐい引っ張るリーダーではなく、部下をサポートしながら目標を達成する共感型リーダーシップの取り方があると知った。これからはプレーヤーから脱却し、部下をサポートして手柄をとらせる「サーバントリーダー」になることを目指す
・最終的にはコンサルティングができるスキルの習得を目指し、業界団体への参加や学会発表を通じて専門知識を取得する
漠然とした不安から本来したいこととは別の方向に向かいそうになったら、ぜひ今回の方法を試してみてください。
朝6時 代表取締役。朝イチ業務改革コンサルタント。慶応義塾大学卒業。外食企業、外資系企業を経て現職。企業の働き方改革、生産性向上の仕組みを構築しているほか、個人に向けては朝活で今後の人生戦略を立てるコミュニティー「朝キャリ」(https://ikedachie.com/course/salon/)を主宰。11年連続プロデュースの「朝活手帳」など著書多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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