異質に価値あり 人材・考えの多様化がリスク分散に
マネックスグループ社長 松本大氏(7)

松本大 マネックスグループ社長
当欄「ビジネスの視点」はマネックスグループ社長の松本大氏、ビジネス向けSNS(交流サイト)を運営するリンクトイン日本代表の村上臣氏、ユーグレナ社長の出雲充氏、KADOKAWA社長の夏野剛氏がビジネス関連の現状や展望などについて持論を展開します。
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性別や年齢、国籍などさまざまなバックグラウンドを持つ人材の能力を活用するダイバーシティー(多様性)の考え方は今や世界の常識。多くの日本企業も「ダイバーシティー推進」を掲げています。しかし、現場レベルではまだまだ戸惑いや反発もあるのではないでしょうか。一人ひとりのマインドセット(思考様式)を変えるにはどうすればよいのか、マネックスグループ社長の松本大氏が語りました。
今回はダイバーシティーについて、個人と組織という2つの視点からお話ししてみたいと思います。まずは個人の視点から。例えば、皆さんの職場でもこういうことはありませんか。最近、チームに加わった外国人メンバーが会議でちょっとおぼつかない日本語でアイデアを提案し、上司は「おお、それはいいね」と乗り気になっている。ところが、日本人メンバーは隣で苦い顔をしている。「おいおい、そのアイデアは俺たちが前からずっと提案していたやつじゃん。これまでスルーしてきたのに、何で外国人が言うといきなり『いいね』になるわけ?」と怒っているのです。ここでいう外国人は女性や若手に置き換えることもできます。
「異質」に価値あり
こうした場合、多分、上司に悪気はありません。人間は誰しも自分と同質性の高い人から言われたことは馬耳東風。違うタイプの人から言われた内容の方が耳に残るのです。反応としては「いいね」と興味を示すのか、「何を言っているんだ!」と感情的に反発するのか、両方あり得ますが、いずれにせよ異質な人の意見はそれだけインパクトがあるんですね。
私はゴールドマン・サックス証券の東京オフィスで働いていた時、30歳でゼネラル・パートナー(共同経営者)になりました。でもあの時、もし私が同じ30歳の米国人で、ニューヨークで働いていたとしたら、同じポストに抜てきされることはなかったでしょう。周りからすれば、私は英語も下手だし、言っていることも変わっている。いろいろな意味で異質だったので、それだけ気になる存在だったのだと思います。つまり、異質であることはそれ自体にバリュー(価値)があり、発信力があるのです。