家具大手のニトリホールディングス(HD)が外食事業に本気を出していることをご存じだろうか? 連結売上高7169億円、経常利益1384億円(2021年2月期)、自己資本比率が7割という超優良企業の同社が激安ステーキ店の展開を始めた。遊びじゃないのは、店に行ってみると分かる。家具並みに「お、ねだん以上。」を実感できる。
ニトリが展開を始めたのはステーキ店「みんなのグリル」。ニトリダイニングを冠している。現在3店。東京都足立区の環七梅島店、神奈川県相模原市の相模原店、東京都練馬区の成増店だ。いずれもニトリが開発した小ぶりの敷地にニトリの店舗とともに複数の独立した飲食店がある構造だ。
7月14日にオープンして1週間たった成増店を訪れた。東武東上線の急行停車駅、成増駅から徒歩10分ほど。以前は住宅展示場だった敷地をニトリが取得し、店舗を含めたコンプレックスを作っている。「みんなのグリル」1号店である環七梅島店のオープンは、21年3月。そこからわずかな期間で3店を展開している。
成増店は、オープン初日から行列ができていたという。訪問した日も、ニトリに来たらしい主婦、近所のOL、そして建設系らしきブルーワーカーが列を成していた。「激安」は人を呼ぶ。実は、環七梅島店に開店して間もない時に訪問したことがある。3カ月ほど前だ。こちらも人がいっぱいだった。ところが今回成増店を訪れて驚いた。細かいところが、えらい勢いで進化しているのだ。

「みんなのグリル」の主力商品は「チキンステーキ」と「チキングラタン」。いずれも価格は500円。「チキンステーキ」は240グラムとボリューミー。「チキングラタン」もタップリの量が出てくる。これで500円は安い。さらに「ハンバーグステーキ」が150グラムで600円、「リブステーキ」が150グラムで990円とラインアップされている。ペッパーフードサービスが展開する「いきなり!ステーキ」ばりの安さが売りだ。
加えて、「いきなり!ステーキ」にはない「ラムステーキ」(150グラム、990円)も投入している。ラムは、いま話題の食材。客の動向に敏感なニトリらしい選択だ。経営は、ニトリグループのニトリパブリック(札幌市)。もともとは広告代理業を営むハウスエージェンシー。

実は、今ある3店は、もともと「いきなり!ステーキ」のフランチャイズ(FC)店だったところ。ニトリは、「いきなり!ステーキ」が急激に店舗数を増やしている段階でFCに加盟し、6店まで伸ばした。そして、21年に入って、自社ブランドに次々看板替えをしている。「いきなり!ステーキ」で勉強させてもらい、そのノウハウを自社ブランドに生かしていこうという戦略だろう。