製造技術のキモは門外不出

棒状で持ちやすいのがプリッツの独自性だったが、全体にチョコレートをかけると、食べている最中に溶けてきて、指が汚れてしまう。当初は1本ずつ銀紙で巻く案を試していたが、うまくいかなかった。

塗ったチョコレートをいったん乾かしてから銀紙で巻くのは、生産効率が悪い。さらに、食べるときにも「銀紙をはがす」という動作が加わることに。目指している「軽やかに楽しめるチョコレート」というコンセプトともなじまなくなってしまう。

「兄」のプリッツ同様に、パッケージからスッとつまんで、そのまま食べられるようにするにはどうすればいいのか――。頭を悩ませ続けたある日、開発チームの一員が「プリッツ全体ではなく、持ち手になる部分を残してコーティングすればいいのではないか」と思いついた。それが、現在のポッキーの原型になった。

一度思いつきさえすれば、誰でも簡単に実現できそうに思えるこのアイデア。しかし、工場で大量生産するとなると、一筋縄ではいかない。

まず、まっすぐに焼かれた細長いプレッツェルを、折れることなく規定のサイズにカットするためには、食感の良さを残しつつも、強度のある配合を追求する必要がある。さらに、チョコレートを薄くも分厚くもなりすぎず均等にまとわせるのが難しい。安定的に同じ長さの持ち手部分を「塗らずに残す」のも、至難の技だという。同社はこのすべての関門をクリアする製造設備を独自に開発した。

「技術は、ポッキーの心臓部分。いわゆる『門外不出』の企業秘密です。社員であっても、工場の様子を見ることはめったにかないません。時代を経て、次々と新しいフレーバーや、軸の長さ・太さにバリエーションを加えた商品を打ち出していく中でも、コーティングのバランス調整は毎回のように苦労するポイントです」

仮に、同業他社がこのアイデアをまねようとしても、製造方法を開発するのにかかる時間と労力は計り知れないという。「持ち手を残す」というアイデアは見せるが、その製造ノウハウは一切、明らかにしない――。この「心臓」を守るという戦略が、半世紀もの間、ポッキーが勝ち続けられた要因の一つであることは間違いないだろう。

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もともとの名前は「チョコテック」、箱は横型
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