「異」なる場所を動き続けた半生

どうしてこのような考え方に至ったのか、これを生い立ちにさかのぼって語っていくのが本編だ。父親の転勤に伴って何度も国境を越えた幼少期から少年時代、好きな音楽を仕事にしたいと入社したCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)で命じられたニューヨーク勤務、そこから始まる家庭用ゲーム機事業、プレイステーションとの関わり……。

思えば「『異』なる場所を転々と動き続けていた」と、平井氏はこれまでの歩みを振り返る。その時々に考えたこと、感じたことの中から「異見に触れて取り込む」「つらい仕事こそリーダーがやる」「肩書で仕事をするな」「徹底した社員との対話からやるべきことを抽出する」といったリーダーとしての思考法や心構えが立ちのぼってくる。

入社当時のソニーからみれば、音楽会社は「辺境」、エレキのソニーからみればゲーム事業も辺境。そうした場所で目の前の仕事に真摯に向き合ってきた平井氏が心に刻んだリーダーの基本は、組織で働く多くのビジネスパーソンを勇気づける指針になりそうだ。「来客が少なくて一般向けのビジネス書の動きが少ない中、この本には多くの読者が反応した」と同書店でビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。

日銀審議委員の回顧録が上位に

それでは先週のランキングを見ていこう。

(1)変革 IT業界に革命を起こすボールドの秘密澤田敏著(ゴマブックス)
(2)ソニー再生平井一夫著(日本経済新聞出版)
(3)医師が教える新型コロナワクチンの正体内海聡著(ユサブル)
(4)詳解 デジタル金融法務佐野史明著(きんざい)
(5)デフレと闘う原田泰著(中央公論新社)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2021年7月19~25日)

1位はシステム開発会社の社長が自社の人材育成法と評価制度を解説した本。今回紹介したソニー平井氏の本が2位で、店頭では一番売れた本だったという。3位は反ワクチンを唱える医師の著書。4位にはデジタル金融にからむ規制の論点を解説した金融機関の担当者やファンドマネジャー向けの実務書が入った。5位は黒田東彦総裁下の日本銀行で、リフレ派の一人として金融政策を決定する政策委員会審議委員を務めた著者による回顧録だった。

(水柿武志)

ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」

著者 : 平井 一夫
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,760 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介