選考の内容は5分間の自由プレゼンなどです。普段は大学で90分で講義をしている自分にとって、「5分では何も伝えられないんじゃないか……」と不安な中で選考が進みました。そもそも何をプレゼンしたらいいのかもわからない。わからないことだらけでした。

このわからないことだらけが、成長源なのです。複数回の選考を突破して、最終プレゼンは選考に残った他のメンバーと孫正義さんの前でプレゼンをしました。

人生を振り返るなら、間違いなく私の転機となった瞬間です。無事に選考を通過し、ソフトバンクアカデミア生(外部1期生)として学びが始まりました。細かなプログラム内容についてはNDA(秘密情報保持契約)をソフトバンクと結んでいるので言えないのですが、共通課題に対してプレゼンをしたり、他のメンバーとディスカッションを重ねたりしました。

そこで得たことは、大学の外での知見とネットワークです。別世界の経験です。ソフトバンクアカデミア1期生には、ヤフーアカデミア学長の伊藤羊一さん、リンクトイン日本代表の村上臣さん、家庭向けロボット「LOVOT(ラボット)」を開発したGROOVE X(グルーブエックス)社長の林要さんなどが在籍していました。今では社外顧問を27社歴任するようになりましたが、ソフトバンクアカデミアの経験なくして、それはあり得ません。

大学の外に出て、「キャリア資本」が増幅した

キャリア論から考えると、ソフトバンクアカデミアへの挑戦はいかなる経験だったのか?

それは私にとって新たな「キャリア資本」の蓄積機会であったということなのです。これからのキャリアは、組織の中で完結しません。組織を出たり入ったりしながらキャリアが形成されていくのです。その時に大切なのが、組織が与えてくれる組織内の肩書ではなく、自らが蓄積するキャリア資本なのです。

キャリア資本とは、次の3つの資本から構成されます。

(1)ビジネス資本……スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴などの資本
(2)社会関係資本……職場、友人、地域などでの持続的なネットワークによる資本
(3)経済資本……金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本
キャリア資本の概念図(田中教授作成)

キャリア資本を考えるうえで、2つのポイントがあります。1つは、蓄積したビジネス資本と社会関係資本は減少しないこと。もう1つは、組織内で同じ業務を続けているだけだと、新たな資本は形成されないということです。

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20代は「目の前の業務に集中」は本当?