
2021年7月20日、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏ら4人を乗せたブルーオリジン社の宇宙船ニューシェパードが、およそ10分間の弾道宇宙飛行を終えて無事地球に帰還した。
7月11日に宇宙飛行を成功させたリチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・ギャラクティック社と同様、ブルーオリジンも今年中にニューシェパードによる宇宙旅行の販売を開始する。一度に搭乗できる人数は6人までで、約4分間の無重力体験を含め、スリルあふれる短い宇宙への旅を乗客は楽しむことができる。
搭乗券の価格はまだ公表されていないが、ブルーオリジンによると既に希望者は集まっているという。そのうちの1人は、今回ベゾス氏を乗せたフライトに同乗する権利を2800万ドル(約31億円)で落札したが、ぎりぎりになって「スケジュールの都合」により延期した。
ブルーオリジンはこの他にも、月面着陸機や、地球軌道の先へも飛行可能な大型ロケット「ニューグレン」の開発も進め、宇宙ステーションや人工衛星の世界へ人類を送り、月面歩行を実現させ、さらには地球外居住地を建設するといった未来を描いている。
ブルーオリジンを創業した理由としてベゾス氏は、いつかスペースコロニーを建造し、そこに地球の自然を再現し、多くの人が住んでいる未来を実現させるためだと語っていた。人間を弾道飛行へ送り出すことは、そのビジョンにかなった論理的な第一段階であると、業界アナリストのカリッサ・クリステンセン氏は言う。
「ジェフ・ベゾス氏の発言を、私は文字通り受け取っています。ベゾス氏は、人間が宇宙へ行くこと、そのアクセスを広げること、人間が宇宙に住み、働いている未来を実現させることの重要性と価値を心から信じています。彼なら、有り余る時間とお金を使ってなんでもできるでしょう。けれど、その個人資産をロケットを打ち上げる企業につぎ込むことを選んだのです」。クリステンセン氏は、航空宇宙コンサルティング会社ブライス・スペース・アンド・テクノロジーの創業者で、同社の最高経営責任者を務める。
しかし、商業飛行を成功させたからと言って、ブルーオリジンやヴァージン・ギャラクティックが必ずしも宇宙へのアクセスを広げているわけではないという指摘もある。少なくとも、今のところはそうは見えない。
初飛行の乗員は、大富豪とその招待客で占められ、単なるウルトラリッチの娯楽にすぎないのではと、専門家は疑問視する。天文学的な額を支払わなければ搭乗券が手に入らないのであれば、どれだけアクセスしやすいと言えるだろうか。