巨大ECが支配する小売り コロナ後の実店舗の活路は青山ブックセンター本店

ビジネス書コーナーの棚端の平台に展示。両隣より山が低くなっている(青山ブックセンター本店)
ビジネス書コーナーの棚端の平台に展示。両隣より山が低くなっている(青山ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に一度訪れる準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。先月に続いての訪問だったが、ビジネス書の売れゆきは回復基調で、新刊への反応もよく、ランキングの顔ぶれが週ごとに変わるようになってきたという。そんな中、書店員が注目するのは世界的な小売りコンサルタントがポストコロナの小売りの未来像を最新の動きを追いながら提示した一冊だった。

一握りの怪物企業が支配する市場

その本はダグ・スティーブンス『小売の未来』(斎藤栄一郎訳、プレジデント社)。著者のスティーブンス氏は小売りコンサルティング会社のリテール・プロフェットを創業したコンサルタントで、ウォルマート、グーグル、ジョンソン&ジョンソンなど多くのグローバルブランドの戦略に影響を与えているとされる。その世界的なコンサルタントが新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う世の中の変化をとらえて執筆したのが本書だ。

全体は8章構成。前半の4章では、これまでに起こっている買い物をめぐる変化と、いま起きつつある様々な動き、これから加速するであろう「怪物企業」の戦略を手際よく分析する。怪物企業とはアマゾン、アリババ、京東商城(JDドットコム)、ウォルマートを指し、これに続くいくつかの大手小売りが「怪物ジュニア」となる。巨大EC(電子商取引)を足がかりに「頂点に立つ一握りの怪物企業と、それに追随する新進の怪物ジュニアが支配する市場」――そんな時代が訪れると著者は説く。そのとき他のブランドや小売業者が取りうる道は何か。そこを後半の4章で論じていく。

消費者の問いかけに答えるのが生き残りの道

「パンデミック後も、時代を超えて消費者が抱いている問いかけが少なくとも10種類ある」。その問いかけに対して明快な答えとなれるなら生き残りの可能性があると著者はいう。例えば「自分を奮い立たせてくれるブランドはどれ?」という問いかけ。これに答えられるのは「ストーリーテラー」(物語の語り手)型のブランドで、ナイキがその実例としてあげられる。

「自分の価値観と一致するブランドはどれ?」。この問いに対応するのが「活動家」型のブランドで、実例はアウトドア用品のパタゴニアだ。「新しくてクールなものは、どこにいけば手に入る?」――この問いに答えるのは「流行仕掛け人」型で、百貨店を定義し直した米ネイバーフッドグッズを取り上げる。

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