つまり、学区撤廃は公立高校が進学実績を高めるための特効薬だというわけだ。それまで各学区のトップ校に分散していた学力最上位層が一部のトップ校に集中するわけだから当然の理屈である。人口規模の大きな都道府県ではその効果はさらに顕著に表れる。私立高校にはもともと学区は関係ないが、大前提として、高額な学費がかかるというマーケティング的不利がある。
かくして「全県一学区制」は全国的なトレンドになった。プロ野球に例えるなら、各チームの4番バッターを集めてオールスターチームを結成するようなものだ。一部のトップ校が派手な進学実績を出すようになるので「公立復権」といわれやすくはなる。しかし一方で、4番バッターを引き抜かれてしまったチームの進学実績は落ちる。つまり、これは公立高校間での格差を促進する制度でもあり、いずれは再び制度変更を検討しなければいけなくなるはずだ。
公立学校の制度設計によって私立高校の進学実績は上がったり下がったりして、歴史はくり返す。進学校の盛衰が、実はそのような外的要因による部分が大きいことは、この類いのランキングを見る際に、頭の片隅に置いておいてほしい。