男子中高一貫校が上位を寡占しているのはなぜか?

ちなみに昨今「東大合格上位校に男子中高一貫校が多いのは、経済格差およびジェンダーの両面での社会の歪(ひず)みを象徴している」といわれることがあるが、これは上記のような経緯の必然的な結果でしかない。

まず経済格差の観点から。ときどき東大生の出身家庭の年収の高さが話題になる。それと私立高校からの合格者数の多さが結びつけられ、「私立に行くお金があるから東大に合格できるのだ」と解釈されることがあるが、それは結論を急ぎすぎである。

教育社会学者の苅谷剛彦氏は『大衆教育社会のゆくえ』(中公新書)で、数々のエビデンスを示しながら「私立の六年制一貫校の普及によって、東大入学の階層的な閉鎖性がはじめて作り出されたというわけではないのである。私立高校が優勢になる以前から、専門・管理職の子弟たちは、日比谷や西などの公立高校を経由して、やはり東大にたくさん入学していた」ことを明らかにしている。私立人気が起こるずっと前から、もともと東大は「上層ノンマニュアル」と呼ばれる特定階層の子弟が入る大学だったのだ。

次にジェンダー的観点から。もともと東大合格者に占める女子比率は異常に低い。今年初めて2割を超えたという程度。だから、女子校のトップ10入りは94年の桜蔭が初だったし、以後も桜蔭以外は1校もトップ10に入っていない。これが根強いジェンダー・バイアスの差であることは間違いない。

一方で、前述の通り60年代半ばまでは都立高校が上位を寡占していた。実際の合格者の大半は男子ではあったが、形式上、これらはすべて男女半数ずつの共学校である。このままであれば男子校が有利とはいわれなかったはずだが、学校群制度によって都立共学校がランキング上位から姿を消した。それで残ったのが、男子中高一貫校だったというだけの話である。

私がむしろ問題だと思うのは、そのような男子中高一貫校生の進路の多様性の乏しさである。高校生にもっと多様な進路を見せる努力が必要だろうし、社会においても「東大主義」に代わるもっと多様なモノサシが必要だ。

進路の多様性が増せば各校の東大合格者数は減る

さて、今回は、大学通信の協力を得て、現在の「共通テスト」へとつながる「共通一次試験」が導入されて以降の各高校の東大合格者数を10年おきに平均したランキングと、直近5年間平均でのランキングを作成した。時代ごとの勢力図の移り変わりが読み取れるはずだ。

たとえば90年代と直近5年間を比べると、トップ20から桐蔭学園、武蔵、巣鴨、洛南、千葉・県立、桐朋、愛光がいなくなり、代わりに聖光学院、渋谷教育学園幕張、日比谷、西大和学園、浅野、甲陽学院、早稲田がランクインしている。

東大ランキングで順位を落とす学校のなかには、昨今の医学部人気の影響を受けている場合がある。「東大よりも医学部」という価値観だ。また、東大一辺倒の価値観に疑問を抱く生徒が多い学校では進路が多様化し、結果、東大合格者が減る場合もある。たとえば「(秀才が多い)東大よりも(変人が多い)京大」という価値観である。

大学通信調べ。※印は国立、◎印は私立、無印は公立を示す。合格者数は各高校への調査などから集計した。校名は現在の名称

この連載では次回以降、「京大合格数ランキング」「国公立大医学部合格数ランキング」「東大+京大+国公立大医学部の合計合格者数」を順次掲載していく予定なので、これらを総合的に見てほしい。

(2)京大合格ランキング 関西の公立校、なぜ躍進

(3)国公立大医学部合格ランキング 西日本が優位な理由

(4)東大+京大+国公立医学部 合格者数ランキング1位は

超進学校トップ10名物対決 (日経プレミアシリーズ)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 990 円(税込み)

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