NYのおじの嘆きが起業の原点

この期間にサムスン電子で、デザイナーとしてパートタイムで働いた。今も友人には同社の技術者やデザイナーが多い。次に建築学を専攻するため、ニューヨークにある名門コロンビア大学大学院の門をたたいた。

その直後に起業のヒントを得る出来事があった。ニューヨークにはおじが暮らしていたが、ある日、嘆きの声を聞いた。「最近、難聴で耳がよく聞こえなくてね。高価な補聴器を使っているが、役に立たない」。何十万円もする不格好なデザインの補聴器は放置したまま。その時、「スマホを使えば、もっと機能性やデザイン性に優れた補聴器を開発し、安く提供できるのは」という発想が頭に浮かんだ。

「建築の勉強なんてしている場合じゃない」とコロンビア大大学院を中退し、起業の準備に専念した。試行錯誤の末、開発したのが聴覚サポートイヤホン「オリーブスマートイヤー」(2万9800円)だ。

この機器はスマホのアプリ経由で音を自分好みの高さや大きさに自在に調整できる。独自の雑音除去システムで、騒音を低減し、人の声を比較的はっきり届けることも可能。会話やテレビモード機能もある。もちろん通話や音楽を楽しむこともできるのだ。日本ではまだ補聴器の認定を受けていないが、最新の同社製イヤホンは米国では補聴器として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。

オリーブユニオンの聴覚サポートイヤホンは日米韓で売り出され、累計販売数は8万台を超えた。同社の日韓米の社員は40人あまり。「多国籍な空間で、刺激を受けながら皆で成長している」とソンさんは話す。

目標とする経営者は米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏やソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏。7月4日、米国の独立記念日に創立したオリーブユニオンは東京で5周年を迎えた。韓国のイーロン・マスクは日本で著名起業家になれるのか、挑戦はまだ始まったばかりだ。

(代慶達也)

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