「あさひ町内会」は都営地下鉄三田線の板橋区役所前駅から徒歩約3分の場所にある

同店で提供されているのは、「味噌」「醤油」「塩」「昔風」など、『すみれ』とおおむね同じラインアップ。修業先仕込みの看板メニュー「味噌らーめん」の水準の高さは、前回のコラムでお伝えした通りだが、今回、特におススメしたいのが、「20年前恋した味噌ラーメン」。2020年秋にお目見えし(提供当初は数量限定)、本年1月からレギュラーメニュー化し、マニアを中心に絶大な人気を博している。本山店主が20年前に食べて夢中になった思い出の味噌ラーメンを再現した「味噌らーめん」の変化球バージョンである。

同品は、デフォルトの「味噌らーめん」と比べ、スープをより濃厚に、味をよりしょっぱく、ラード油をより多めにするなど、純すみ系味噌ラーメンを特徴付ける各要素を「これでもか!」と言わんばかりにデフォルメした究極の1杯。

スープをすすった瞬間、尋常ではなく濃密なうま味が味蕾(みらい)を通じて、味覚中枢を強襲する。塩味(えんみ)も、現存する同系の味噌ラーメンとは比較にならないほど強い。食べ始めて程なく、身体中から汗が噴き出し始めるのがわかる。通常バージョンよりも分厚いラード油の層も、絶大なパフォーマンスを発揮。麺を食べ終えた後の状態でさえ、提供時と全く変わらないスープ温。細心の注意を払いながら食べ進めていかないと、舌をやけどしてしまう。

提供されているのは、「味噌」「醤油」「塩」「昔風」など『すみれ』とおおむね同じラインアップ

このスープに合わせる麺は、『すみれ』がかつて用いていた札幌の老舗『森住製麺』の縮れ麺。濃厚なスープを真正面から受け止める力強さ。心持ち硬めのゆで加減も、存在感を高める要素のひとつとなっている。

圧倒的なけん引力と、これを裏打ちする鮮烈なうま味と尽きることのない香り。見事のひと言に尽きる仕上がりぶりに、ただただ感服。この1杯をマニアだけに独占させておくのはもったいない。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。