日本がいま「ジェラート大国」になりつつあることは、あまり知られていない。
イタリアには約3万9千軒のジェラート店があるが(イタリアジェラート協会調べ)、その中のえりすぐりの有力店が日本に進出し、本場イタリアそのものの味が国内にいながら楽しめるのだ。
ミラノの高級住宅街で人気の「ジェラテリア・マルゲラ」が東京の麻布十番に出店。トリノを本店とし、イタリアの主要駅・空港にも出店する「ヴェンキ」が銀座や大阪に店を構えた。さらに、1900年創業のローマの老舗「ジョリッティ」が、新宿に開店したばかり。映画「ローマの休日」で、女優のオードリー・ヘップバーン演じるアン王女が食べたジェラートと言えば、ぴんと来る人もいるのではないだろうか。
ジョリッティ新宿店では、コーンとカップのジェラートのほか、イタリアでは珍しいスティックバーも売っている。ローマの本店でレシピを学び、日本でその味を再現するのは、エグゼクティブペストリーシェフのフランチェスコ・タリアラテーラ氏。閉店したミシュラン星つき店「ハインツベック」東京店のシェフパティシエをつとめていた人物で、ライスというフレーバーは、日本産の米とイタリアのアマレット(あんにんのリキュール)で再現されている。
日本でも当たり前のように多くの人が楽しんでいるジェラートだが、そもそもジェラートとは何なのだろうか。アイスクリームやソフトクリーム、シャーベットとは、無意識のうちに区別されているが、実はイタリア語のジェラートは英語のアイスクリームに当たり、シャーベットも含まれているのでややこしい。イタリア人の感覚で言えば、ジェラート職人がフリーザー(ジェラートマシン)で作るのが手作りジェラートで、コンビニエンスストアやスーパーなどで販売される大量生産・長期保存が可能なアイスクリームはジェラートとは認めないふしがある。
職人が自らの手でマシンを動かし、冷やし固め、混ぜて空気を含ませることでふんわりとなめらかに仕上がったものを、ここでは「ジェラート」と考えることとしたい。
地域や職人で味が異なるのが、日本のジェラートの魅力
実は、イタリアのジェラートに地域差はあまりなく、ミルク味、チョコレート、ピスタチオ、レモンなど定番の味は北から南までほぼ共通している。対して日本は、地域や職人ごとにジェラートに新味が加えられ、個性豊かなのが魅力だ。世界大会で入賞するまで技術を高めた日本人職人たちによって、ジェラートの世界に新風が吹き込まれている。日本がジェラート大国になりつつあるゆえんだ。