SKY-HI デビューメンバーに「聖人」「好青年」求めず
連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(10)
SKY-HIが手掛けるオーディション・プロジェクト「BMSG Audition 2021 -THE FIRST-」はHuluや『スッキリ』〈日本テレビ系〉などで配信・放送中だ。20年に同じくHuluなどで配信された韓国JYPエンターテインメント主催のオーディション番組『Nizi Project』(ガールズグループNiziUを生んだオーディション番組)では、「ダンス」「ボーカル」「スター性」に加えて「人柄」も審査基準となっていたことが話題となった。アイドルグループのファンも"推し"を褒める際に「人柄がいい」ことを挙げることもあり、何か誤解を招くようなエピソードが出回れば、即、SNSなどでの炎上につながっていく。

完璧な品行方正を求める風潮を、SKY-HI自身はどう見ているのか、また、新しいボーイズグループのメンバーにはパフォーマンス以外の部分で何を求めていくのだろうか。
「今回の『THE FIRST』では、それぞれの段階で何を見るための審査かは明確に準備していますが、そのなかに『人柄』の項目はありません。少なくともクリエイティブ審査で人に対する態度や人間性、リーダーとしての資質など、クリエイティブ以外の部分で判断して誰かを脱落させることはしていません。
僕は、誕生するグループのメンバーの全員が全員、聖人である必要はないと思っているし、好青年である必要もないと思っています。いわゆる、"誰もが明るく楽しく"というのもそれほど求めていないんです。むしろ、世間の『(ボーイズグループの)全員が全員、好青年でなければいけない』という空気が殺してしまっている『才能』も少なくないと感じています。
僕自身、これまで『偉い人に気に入られないといけない』というような空気感を見ては、モヤッとした思いを抱えてきました。今回のオーディション参加者のなかにも、自分のクリエイティビティとは別の、そういった圧力や言葉に傷つき、苦しんできた経験を経てきたメンバーがいます。
彼らに対して求めるのは、『音楽に対して実直・誠実であってほしい』ということ。これが全てにつながってくると考えています。最近、彼らにも繰り返し話しているんですが、音楽に実直・誠実であるということは、一緒に音楽を作る仲間であるメンバーやスタッフに対しても実直・誠実であることが間違いなく求められます」
「さらに彼らのデビュー後には、その音楽を受け取り、応援してくれるファンに対しても実直で誠実であることにつながってくる。このことは本当に大事にしてほしいです。
結局、人は『自分のことを誠実に扱ってくれている』と思えば、『この人は人柄がいい』と捉えると思うんです。ほかのメンバーやスタッフやファンに対して誠実に向き合っていたら、自然と『人柄がいい』につながっていくんじゃないでしょうか。ただ、この場合の人柄は、(NiziUを生んだ)J.Y. Park氏の言う『人柄』とはちょっと違うかもしれません。
もちろん、これから彼らは、自分たちの一部の発言や姿、態度しか見てない人たちに、いろんなことを言われる機会も増えるでしょう。表に出ている以上、そうなっちゃうかもねと思うし、ある程度は仕方ないと受け入れる必要もある。
けれども、その一方で忘れないでほしいのは、自分を見てくれている人、応援してくれている人がいること。その人たちは、大切な時間やお金や心を自分たちのために注いでくれているわけです。注いでもらったことに対しては、まず最低限の感謝とリスペクトがないと不誠実。そこに対して誠実であることは僕自身も大事にしていますし、デビューするメンバーにも誠実さを求めていくつもりです」
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2021年8月号の記事を再構成]
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