「理想の自己PR」から見える 就活前に取り組むことふつうの大学生のための就活ガイド 第6話

2021/7/21
日本大学経済学部・安藤至大教授が、これから就職活動を始める「ふつうの大学生」の相談に乗る、ストーリー形式の連載「ふつうの大学生のための就活ガイド」。第6回のテーマは、理想のエントリーシートです。(学生も会話もフィクションです)

N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に行きました。前回、「理想のエントリーシートを書いてみましょう」という課題を出された蒼太は、授業後に安藤先生の元を再び訪れます。

蒼太 先日はどうもありがとうございました。理想のエントリーシート(ES)を書いてみました。こちらです。見て頂けますか?

安藤先生 はい、それではまず自己PRから読んでみますね。

■あなたが学生時代に力をいれてきたことはなんですか?(800字以内)

 私が学生時代に力をいれてきたことは2つあります。
 1つ目は、「お客様の要望を徹底的に聞く」ことです。私は、建築学科にて、住宅のリノベーションに興味を持ち研究をしてきました。リノベーションは、もともとの住宅の良さを活かしながら、お客様のニーズを最大限に反映する必要があります。そして研究室の課題として、実際にリノベーション提案を複数件体験しました。
 その中で最も苦戦したのは、最初は住み慣れた住居を生かして老後暮らしやすいようにしたいという要望であったのが、何度プランを提示してもお客さんが納得してくれない案件でした。そこで根気よくヒアリングを繰り返していくと、孫に頻繁に遊びにきてほしいという想いがあることがわかりました。そこで、バリアフリーでかつ、子供がはだしで遊び回れる家を提案しました。その結果、建築学科での最優秀賞に加えて学生コンテストで大賞を受賞することができました。この経験によって、お客様の希望を引き出すことの重要性を学びました。その後の課題でも、お客様自身が言葉にできないでいる要望をくみ取る努力を続けています。

 2つ目は、「チームのために自ら率先して動く」ことです。私は、小学生から野球を始め、現在は大学の野球部に所属しています。勝利のためにはチームワークが必要であるため、私は特に後輩の指導に尽力しました。後輩からのアクションを待つのではなく、自分の空いた時間には後輩の癖を観察してアドバイスを行い、良いプレーがあれば積極的に声掛けして称賛することを心がけています。
今では後輩から生活面での相談を受けることもありますし、監督からもチームの橋渡し的な存在として認識されています。小さな積み重ねであっても、自分のプレーを誰かが見てくれているという安心感を皆に感じてもらうことが重要です。また、それがチームワークの向上につながっていると感じており、仕事をする上でも大切にしていきたいと考えています。

安藤先生 これは、頑張りましたね! どんな意図で書いたのかを説明してもらえますか?

蒼太 (やった!)ありがとうございます。僕は、経済学部なんですが、やっぱりリノベーション会社といえば建築学科のほうがうれしいかなと思って、まず建築学科の学生ということにしました。実際に家のリノベーション案なんかを考えて、学生のうちに賞をとった設定です。

あと、僕はやっぱり野球が好きで努力してきましたから、野球について書きました。本当は高校生から始めたのですが、一つのことを続けられる人間というのは魅力的だと思って小学生から始めたことにして、サークルではなく部活の方がいいかなとも考えました。

安藤先生 なるほど、いいですね。確かにこの人物であれば、Dリノベーションはもちろん、他の企業でも会ってみたいと思う採用担当者は多いでしょうね。もちろん改善できるポイントはありますが、よく書けていると思います。

理想の自己PRを書く意味

蒼太 でも、これは僕じゃない別の人ですよね……。確かにこんな人がいたらすごいなと思って書いてみましたが、今回の取り組みにどんな意味があるのですか? 僕はもう3年生ですし、経済学が楽しくなってきたところです。今から大学を受け直すことや転部などは考えていません。

安藤先生 南さん、ちょっと不満そうですね(苦笑)。理想のESを書いた意味はもちろんあります。

まずDリノベーションにとって理想的な人物を想像してみることで、企業の視点から、採用したい人物像を南さん自身が想像してみたことが重要です。会社から見た理想的な学生を考えるためには、業界や企業のことをよく理解する必要がありますし、実際に似たような人がライバルになるかもしれませんよね。

蒼太 えー、こんな学生がいたら確実に負けます……。

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理想の自己PRから、今後できそうなことを考えてみる
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