――心境の変化をもたらしたものは。

「クリエーターが増えたことですね。代表的な施設である高級旅館『ふふ』や『せかいえ』はスモールラグジュアリーリゾートといって、部屋数は少なく、プライバシーが守られ、お客様のあらゆる望みをかなえる施設を目指しています。じっくり時間をかけて、それぞれの土地に根ざしたコンセプトを考え、個々の部屋すべてを異なるしつらえにしています」

「飲食店もすべてそれぞれの土地に根ざしたユニークなデザインを取り入れています。こうして事業領域が広がるにつれ、設計やデザインを内製化するようになりました。サービスの人間は別として、クリエーターやデザイナーにはハウスルールは当てはまりません。ネクタイは似合わないし、みな自由な服装です。長髪をやめてといっても反発されるでしょう」

「こんなふうにKPGの業容が変わるなかで、絶対スーツという考えを転換しようと思い立ったんです。逆に、我々も今のトレンドやライフスタイルを分からないといけないな、と思うようになりました。私自身も特別なお客様にお会いするようなとき以外は、フリーな服装でやっていこうというルールにしました」

4年ほど前から「スーツ縛り」をやめた。「学生との面接でも普段着で来てもらうようにしたい。これからは個性を尊重していきたいです」

採用面接 画一スーツより個性を見たい

――仕事の装いはどんどんカジュアル寄りとなり、コロナ禍のリモートワークではオンオフの境界があいまいになっています。

「数年前から個性を出す時代になり、アフターコロナはさらに個性やオリジナリティーが問われる時代になっていると思います。最近リクルーターにも『普段着で面接に来てもらおうよ』とよく言っています。学生さんは似たようなリクルートスーツで面接に臨んでくれるのですが、個性が分からない。ほんとうはカッコいいTシャツにデニムをはいて、ジャケットを着こなしているはず。髪の毛にも自分なりのこだわりがあるのに7:3に分けている。もったいない気がします」

軽めの素材のセットアップに黒Tシャツを合わせ、チーフも黒。異素材を組み合わせて立体的に見せる

――ただサービス業では接客時のきちんとした格好が大事。厳しいルールはとてもいいことだとも思います。

「もちろんいいことです。でもKPGでは業態によっていろいろな表現をするようになりました。長崎・伊王島のビーチリゾートでは日焼けしたスタッフがTシャツと短パンでサービスします。コンセプトに合った服装・コスチュームを大事にしています。ライフスタイルが変わっていく中で、それぞれのスタッフが個性に応じたものを表現できるようになればいいなあと、会社を変革しているところです」

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服装は「9割が黒」 何にでも合い、邪魔しない