マネーフォワード辻社長 実力つける失敗からの学び方
『失敗を語ろう。「わからないこと」を突き進んだ僕らが学んだこと』著者に聞く
『失敗を語ろう。』著者の辻庸介さん
大きな成果を上げた数多くのビジネスリーダーは、「結果を出すためには、失敗を繰り返しながらも学びを得て乗り越えていくしかない」という。しかし一方で、失敗を恐れる気持ちを強く持つ人も多い。そこで、『失敗を語ろう。「わからないこと」を突き進んだ僕らが学んだこと』(日経BP)の著者である、マネーフォワード社長兼最高経営責任者(CEO)の辻庸介さんに、若手時代の失敗体験や、失敗をラーニングとしていくための考え方を聞いた。
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「他責」ではなく「自責」 仕事を自分事にする
僕は、これまで多くの大変な失敗をしてきました。たとえば『失敗を語ろう。』のChapter2で書かせてもらったのは、仲間を集めて起業して、頑張って作ったサービスが世の中に全然受け入れてもらえなかったときの苦労です。
起業もそうですが、新しく事業を始めるというのは、難しいですよね。
最初は、新規事業そのものに対するあこがれのような気持ちもあるし、新しいことに取り組んでいるだけで楽しかったりするのでいいんです。でも、多くの場合はうまくいかない。想像通りになんて進まないわけです。
そうするとまず、「アレ?」と疑問が芽生える。そこから、仲間内でもめごとが始まります。
「アイツのせいだ」とか「社長がバカだからだ」とか「チームが悪い」とか……。自分がやっていることが間違っていると認めるのは怖いし、正解もわからないから、いろいろなもののせいにしてしまうと思います。
でも、プロダクトなどの何か新しいものをつくるためには、ここを越えていかないといけない。誰かのせいだとか、誰かが悪いという「他責」にするのではなくて、「自責」にしないといけません。失敗を自分のこととしてとらえて、「次に何をすべきか」を必死に考えることが、スタートなんでしょうね。
ソフトバンクの孫正義さんのようなすごい経営者だって、若い頃から「頭がちぎれるほど考えた」とおっしゃっています。ちぎれるほど考えようとしても実際はちぎれないし、ラクをしようとしちゃダメだということだと思います。
失敗を自責としてとらえられれば、目の前のことに一生懸命になります。そうすると、自分が出したアウトプットに対する周囲のリアクションとか、うまくいかなかったことへの悔しさとかが強く自分に刻み込まれる。
失敗とそこからのラーニングをまとめた、辻庸介さんの新刊
反対に、他責のままでちょっと手を抜いてしまったり、まだ実力を出してないという逃げ道をつくって余裕でいたりしたら、どんなに失敗をしてもラーニングにはならないと思います。
そうやって、最低でも1年、もっといえば3年は、その新規事業がうまくいかなくても諦めずにひたすら改善し続けることが、チャレンジするときの大前提ですね。
そもそも、本当にいいサービスは、すぐにはできないものです。僕らもここに至るまでに10年もかかっているし、さんざん様々な手数を打って、失敗を繰り返してきたわけですから。