2021/7/24

この論文の筆頭著者であり、ミラノ工科大学で水と食料の安全性を研究するマリア・クリスティナ・ルッリ教授は、この地図が、感染症の流出対策を強化すべき地域や、自然を回復させて危機への耐性を高めるべき地域を見極める手がかりとなると考え、「各国政府は、感染症監視計画の策定に今回の研究結果を活用できるでしょう」と話している。

またヘイマン氏は、ホットスポット候補と特定された地域では、予防的措置として、リスクを高める政策を中止すべきだとも考えている。

コウモリは最強の宿主

新型コロナウイルスが、どのようにして最初に人間に感染したかは、いまだ明らかになっていない。しかし、研究者たちの間で広く受け入れられているのは、コウモリ由来のコロナウイルスが直接または中間宿主を介して人間に伝染したという説で、人獣共通感染症のスピルオーバー(種を越えた感染伝ぱ)として知られる現象だ。

「コウモリは最強のウイルス宿主です」とウッド氏は言う。狂犬病は人間の神経系を冒す危険なウイルス性疾患だが、コウモリは狂犬病ウイルスの宿主にもなる。人間に脳炎や呼吸器感染症をもたらすニパウイルスや、世界各地で数千人の命を奪ったエボラウイルスを無害で体内に保有できるコウモリもいる。

なぜコウモリは、さまざまなウイルスの宿主となっているのか。その理由は科学者たちにもわからない。「他の哺乳類にとって重大な脅威となる病原体を保有しているのに」、なぜ宿主であるコウモリ自身は健康を維持できるのかも不明だとウッド氏は言う。

わかっているのは、コウモリが保有するウイルスが、人間を含む他の動物に伝染することがあり、しばしば破壊的な被害をもたらすことだ。例えば、コウモリの糞で汚染されたナツメヤシの樹液を飲んだ人が、ニパウイルスに感染することがある。また、エボラ熱のアウトブレイクの少なくとも1つの事例は、人間がエボラウイルスを保有するコウモリを捕まえたか、触れた、またはその肉を食べたことで発生した可能性が指摘されている。

コウモリのねぐらがある木のそばで遊ぶ子どもたちにコウモリのふんが付着して、家に持ち込まれたり、鼻や口にふんが直接入ったりする可能性がある。一部の国では、コウモリは狩猟や食用の対象になっている。

ウイルスが、コウモリから中間宿主である他の動物を介して人間に伝染することもある。エボラ熱のアウトブレイクでも、一部でこうした感染があったと考えられている。

「このような人獣共通感染症ウイルスで恐ろしいのは、スピルオーバーが絶えず起きていることです」とウッド氏は話す。なかでも最も危険で警戒が必要なのは、人から人に感染するウイルスだ。ウイルスはコウモリと他の哺乳類との間で感染するのは得意だが、人から人に感染するプロセスは「ウイルスにとっても容易ではない」とウッド氏は言う。「新型コロナウイルスは、それができる典型的な例なのです」

(文 JILLIAN KRAMER、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月25日付]

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