――仕事がつらい時期もありましたか?
ありました。今だからこうして言葉にできていますけど、半年ぐらい前までは眠れない、起きられない、食べられない、という状態が続いていました。コロナ禍の影響で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)関連の仕事の受注が一気に増え、業務に追われるようになったのです。前述の、働き方に疑問を感じる社員との社内調整に時間がかかっていたこともストレスでした。
仕事に頑張れなくなる自分がいて、このままではダメだと、気分転換のつもりで海辺の町でワーケーションもしました。ですが、業務上でのストレスが減ることはなく、せっかくすてきな場所にいるのに……と、むしろ気がめいってしまいました。目の前の業務はこなしているのですけど、楽しいと感じる機会がほとんどない状態。今、振り返ると、軽い鬱状態だったかもしれません。
海に向かって自問自答「10年後のために仕事をしてるか?」
――そのようなつらい時期をどう乗り越えたのですか?
車で海まで行って、一人で自問を繰り返していました。「自分は本当はどんな仕事がしたいのか?」などを実際に口に出していたことも。海を見ながらいつの間にか数時間たっていたということも何度もありました。「10年後に自分が住みたいと思える世界をつくっているか?」「そのために、今の仕事に向き合っているか?」と自分に問いかけたとき、はっきりと「NO」だと思ったことを覚えています。
そこからすぐに辞めるという答えが出たわけではありません。土日に出社して仕事をしてしまう日もあった私からすると、土日に完全に仕事から離れるという風に割り切るのは時間がかかりました。ですが無理にでもパソコンから離れ、チャットツールを開かないということを徹底するうちに、次のキャリアステージへいきたいと思うようになってきたのです。
――この3年間で身につけたことは何ですか?
プロジェクトマネジメントです。調整に疲れたと言いましたが、1つのプロジェクトを立ち上げて展開していくには、社内外ともに調整が必要であるとは考えており、身についたスキルの1つです。物事を俯瞰(ふかん)し、先行きを見積もるということ。いかにしてウィンウィンな関係で協力をしてもらえるか、そういった視点を早い段階で身につけられたのはいい経験になりました。
――次のキャリアステージとは?
お金をもらう側ではなく、お金を生み出す仕組みを作る側へと挑戦したいです。具体的には、起業することを考えています。自分の事業を育ててみたいというキャリアプランは、大学生のときから抱いていました。これまでの経験も生かせるように、今の会社とも可能であれば、業務委託契約などを結んで、仕事を続けていければと考えています。
1つの組織の中で働くというのではなく、自分を軸にいくつかの組織に関わり、複数のプロジェクトに携わる働き方に変えていきたいのです。組織内のキャリアにとらわれる「ザ・会社員」ではなく、主体的にキャリアを形成していくビジネスパーソンとしてキャリアを構築していきたいのです。