日経エンタテインメント!

バリアフリー上演も実現

もちろん音楽コンサートなどでの活用も見据えています。現在でも制御型のペンライトはあると思いますが、これだと当日会場にいる人のものしかコントロールできません。会場で流れる音に「音響透かし」を入れれば、オンラインライブを家で見ている人の「Lumi × Air」を光らすことも可能になります。

――映画館ではバリアフリー上映や副音声上映に活用されているようですね。

長友康彦 1980年生まれ。九州大学大学院芸術工学府卒業後、リデックに入社、主に音響測定アプリなどの開発に従事。2012年、エヴィクサーに入社、20年より技術専門役員CRO。入社よりAnother Trackのアルゴリズム研究・開発を行う。

昨年2月に、映画館でのバリアフリー上映に対応したスマホアプリ「HELLO! MOVIE」をリリースしました。聴覚に障害を持つ方には文字ガイドが表示され、視覚に障害を持つ方に対しては音声ガイドが流れる仕組みとなっています。現在、新作映画は、ほぼ全作品に対応しており、「私は目が見えないのですが、映画鑑賞が趣味になりました」といった声もいただいていています。

また、最近話題の副音声上映にも「HELLO! MOVIE」は対応。これまでに10作品以上で活用され、『映画 えんとつ町のプペル』では、上映場面に合わせて原作者の西野亮廣さんの解説を聴くことができました。リピーターを生む新たな施策としても注目されています。

――おもちゃや、ミュージックビデオなど、活用事例は他にも広がっているようですね。

「CONTENTS SYNC TOY」という、音に合わせて光るおもちゃを4月に開発しました。戦隊モノの変身ベルトなどで、今後需要を見込んでいます。他にも、「サウンドシンクミュージックビデオ」という、ミュージックビデオに音響信号を埋め込むことで、スマホのアプリで特別な映像が見られる取り組みも行っています。

将来的には、わざわざアプリを立ち上げなくても、ブラウザベースでも反応できるようにするなど、Another Trackが当たり前のように使われるようにしていきたいと考えています。

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スズキの視点

音声メディアの広がりによって、今まで以上に活用されるようになったのがスマホのマイクです。今回の取材で改めて、マイクがこれほどの人数に広がった時代はなく、その可能性は無限だと認識しました。またタイムラグが0.1秒に縮まった時に、技術のバリュー・プロポジション(提供できる価値)が明確になり、導入が一気に進んだことも示唆に富んでいます。あらゆるテクノロジーが、コンセプトだけでなく、“速度”という分かりやすい指標によってブレイクするか否かが決まると感じました。

鈴木貴歩
ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンターテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンターテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2021年7月号の記事を再構成]