ローソンの新総菜「マチのデリ」 小容量化で女性狙う
「料理に疲れた」「その日の気分でおかずを組み合わせたい」。忙しい女性の声に応えたのが、ローソンが新たに展開する総菜シリーズ「マチのデリ」だ。容量を抑えることで、商品を買い回りしやすくなるという。新設された専用の売り場にはスポットライトが当たり、いやが応でも目に付く。既存店との違いを実店舗で確かめた。
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ローソンが2021年6月22日、新たな総菜シリーズ「マチのデリ」を都市部の一部店舗で展開し始めた。コンビニの利用者は男性が中心だが、今回のターゲットは女性。サラダやスナックなどを小容量にし、買い合わせをしやすくした。
マーケティング戦略本部副本部長の大谷弘子氏は、「女性のお客様から『忙しくて料理に時間がかけられない』『おにぎりやサラダ、デザートなどをその日の気分に合わせて組み合わせたい』という声が多く、そのニーズに応えた」と話す。巣ごもり時間の増加で運動が不足し、食生活を見直す人が増えたことも一因だろう。
買い合わせが増えれば1度の購入点数が増え、客単価のアップも見込める。さらに食事目的の女性の来店頻度が増えて習慣化に成功すれば新しい収益の柱になる、といった狙いも見える。
ラインアップは「海老といかの明太子サラダ」(330円、税込み、以下同)、「生春巻き(サーモン)2個入り」(278円)、「4種緑野菜のごま和え」(248円)、「リゾットコロッケ(北海道産かぼちゃ&クリームチーズ)2ケ入り」(160円)などの計11品。多くが100~300キロカロリー程度と、軽食が中心だ。
通常の新シリーズと大きく違うのは、専用の売り場を設けたことだ。実際に、導入されたローソン江東東雲店(東京・江東)で、新しい売り場を体験した。
スポットライトを浴びる売り場は店舗のスター格
売り場は店のレジ前。独立した大きな陳列棚が設置され、赤い屋根が付いて目立つようになっていた。一周することでマチのデリの他、通常の総菜やサラダ、汁物、スイーツ、ホットスナックなどを少しずつ買い回れる。
陳列棚は、従来品より商品の視認性が高い。上段ほど棚板の幅・奥行きが短く設計されていて、下段の商品もかがまずにしっかりと確認できる。棚の上部には鏡が付けられ、鏡面に映って商品数が倍増したように見える仕掛けだ。店舗の天井には照明が複数付けられ、まるでスポットライトを浴びたスターのように棚を照らす。
棚のアイテムは、プリンや野菜スティック、豚汁など、各カテゴリーの売れ筋商品を中心に集約している。これまでの店舗では、総菜の棚、スイーツの棚と順番に回る必要があり、動線が効率的とはいえなかった。「赤い屋根のコーナーですべてそろう」という意識が根付けば、消費者・ローソンの両者にメリットが出てくる。
デザートが充実しているように感じたのは、江東東雲店付近にはヤングファミリーが多く、仕入れを増やしているためだ。商品点数をなるべく維持できるよう、1点当たりの個数を減らすこともあるという。
陳列棚のスペースを確保するため、「酒類や珍味の一部の取り扱いをやめることで、棚が入るスペースを捻出した」(ローソン)。商品の個別最適化は通常店舗でも行われているが、マチのデリの登場で取捨選択がより加速しそうだ。
スペース不足で陳列棚が入らない店舗の場合は、壁側の棚を利用する。各段に傾斜を付け、段数を減らすことで視認性を高めるという。
マチのデリを展開するのは、東京や神奈川、大阪、京都といった大都市圏にある約1200店舗。料理に対する不満や課題を抱えた女性が多い地域を分析し、選定した。出店結果を見つつ、エリアの拡大を検討していくという。
効率を重視する都市部の女性のニーズに応え、売り場まで改変したローソン。デパ地下やスーパーの買い回りに対し、真っ向勝負を挑む。より身近な場所での買い回りが根付くのか、その動向に注目したい。
(日経トレンディ 寺村貴彰)
[日経クロストレンド 2021年6月24日の記事を再構成]
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