増える「おうちごはん」 家電も食材宅配連携で後押し
大河原克行のデータで見るファクト

新型コロナウイルス禍で、食生活は大きく変わった。総務省統計局の家計調査結果によると、2021年2月の外食費(2人以上の世帯における「外食」)は、新型コロナウイルスが広がる前の20年2月と比較すると33.3%も減少。一方で、デリバリーサービスを含む食料の20年におけるネットショッピング支出は、19年より55.9%も増加したという。
農林水産省の調査でも、家族と食事をする回数が新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて増加したという回答は20%に達した。食事作りに要する時間や労力が増加したという回答も16.1%あった。
これらのデータが示すように、外食が減る一方で、「家でもおいしく、楽しく食事をしたい」というニーズが高まっている。それは、調理家電の販売や利用が増加していることからも裏づけられる。
日本電機工業会(JEMA)の調べによると、電子レンジの国内出荷数量は21年5月まで8カ月連続で前年比プラスを維持。21年5月は5月単月として過去最高の出荷数量を達成した。
特に高機能モデルの人気が高い。JEMA調査で20年度の実績を見ると、電子レンジ市場全体では前年比8%増であるのに対して、8万円以上の高価格帯製品は同14%増と高い伸びを示している。

プロ級の調理ができる高価格帯製品が好調
高価格帯の電子レンジは、単なる食品の温めだけでなく、凝った料理も作れる機能を備えているのが特徴だ。高価格帯の代表的製品であるシャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」を例にとると、過熱水蒸気を活用し、「網焼き・揚げる」「焼く」「蒸す・ゆでる」「炒める」など複数の加熱方法を組み合わせることで、プロが調理したような本格的な調理ができるという。
また同製品はインターネット接続機能があり、ネット経由でメニューレシピをダウンロードするなど様々なサービスを受けることができる。さらに個人を特定しない形で利用状況を収集し、新たなメニュー提案に生かしている。
シャープによるヘルシオユーザーのメニュー調理回数の集計では、20年度に最も増加したのは「網焼きハンバーグ」で前年度比109%増と倍増。「手作りピザ」が同44%増、「シフォンケーキ」が同42%増、「手作り中華まん」が同19%増、「手作りシュウマイ」が同16%増など、おうち時間を楽しむため手作りにチャレンジしている状況が浮き彫りになった。
このほか「焼き鳥」が同29%増、「あぶり厚切りビーフステーキ」が同13%増、「ローストピーフ」が同10%増となっている。同社は、これを「外食の人気メニューを自宅で楽しむ傾向が見てとれる」と分析している。
こうしたユーザーニーズの変化を捉えて、シャープはヘルシオの利用環境を進化させた。同社が6月24日に発売した新製品「AX-XA20」は、基本機能をいっそう充実させるとともに、食材宅配サービスとの連携を強化した。

焼きたてパンやローストビーフが簡単に
まず自社の食材宅配サービス「ヘルシオデリ」と連携して、人気の冷凍パンを調理できるようにした。1次発酵した冷凍パン生地を新たに用意。ヘルシオのボタンを押すだけで、解凍から2次発酵、焼き上げまでの工程を自動で行い、簡単に焼きたてパンを味わうことができる。

食材宅配サービスを提供するスタートアップ企業、テーブルズ(東京・港)とも提携。届いた食材を、専用ダウンロードメニューから調理できる機能を付けた。
テーブルズが提供する食体験電子商取引(EC)サービス「TASTY JOURNEY with Healsio」を通じて、自宅で本格的な料理を楽しめるようにした。第1弾として、青森県の高級牛「アビタニアジャージービーフ」を使ったローストビーフ、ハンバーグ、ミートローフを300セット用意。これらの食材に合わせた自動調理メニユーをネット経由でヘルシアにダウンロードすれば、レストラン品質の調理が簡単にできるという。

「肉料理に大切なのは火加減。職人技の火加減をヘルシオのテクノロジーで再現できる。最高の食材を、最高の調理技術でサポートし、プロが作ったのと同じごちそうが自宅で食べられる」とする。
新型コロナウイルス禍で広がった「家庭でもごちそうを食べたい」という新たなニーズに、家電メーカーは進化した調理家電と新サービスの組み合わせで応える。
ジャーナリスト。30年以上にわたって、IT・家電、エレクトロニクス業界を取材。ウェブ媒体やビジネス誌などで数多くの連載を持つほか、電機業界に関する著書も多数ある。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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