志望動機、読む人の視点で 人柄が見えれば熱意伝わるふつうの大学生のための就活ガイド 第5話

2021/7/7
日本大学経済学部・安藤至大教授が、これから就職活動を始める「ふつうの大学生」の相談に乗る、ストーリー形式の連載「ふつうの大学生のための就活ガイド」。第5回のテーマはエントリーシート(ES)の定番、志望動機の書き方です。(学生も会話もフィクションです)

N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に来ています。ゼミの卒業生に「Dリノベーション」という会社で働く先輩がいるという蒼太はハウスメーカーやリノベーション(建物の改修)の会社に興味があります。前回はDリノベーションを想定して書いたESを安藤先生に見てもらい、「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと、の略称)のポイントを教わりました。(前回記事はこちら

安藤先生 次は志望動機について、一緒にチェックしていきましょう。

■あなたが当社を志望した理由はなんですか?(800字以内)
私が貴社を志望した理由は3つあります。
(1)貴社で働いている大学の先輩から話を聞いて、事業内容に興味を持ったことです。特に「家は、お客様にとって人生で最大の買い物であり、正解がない難しい仕事ではあるが、お客様に認められた時の達成感は大きい」という点に魅力を感じました。また仕事の進め方として「チームワークを大切にしている」という点が強調されていたことも働きたいと思った理由です。
(2)貴社のチャレンジ精神に共感したことです。少子高齢化や災害など未知の世の中に対して悲観しているのではなく、貴社は新しいことに多く挑戦しています。そういった社風のある貴社は、新しいことにチャレンジをさせてくれる会社であると考えています。私は若いうちから活躍したいと考えており、貴社であれば実現できると思っています。
(3)貴社の風通しの良さです。企業パンフレットを見て、貴社では、社長向けにプレゼンテーションを行う機会があると知りました。社員の声をトップが拾い上げて実現するスピード感のある経営だと感じています。自分自身もその一員になって働きたいと強く思いました。
以上3つの理由により私は貴社を志望させていただきました。

蒼太 志望動機は、正直難しかったです。企業研究って言うんですよね。あれをちゃんとやっていないので、先輩の話と企業のホームページなどから印象に残ったキーワードを引っ張ってきて貼り付けただけという感じになってしまいました。

安藤先生 先に良かった点を見ておきましょう。1点目は、自己PRと同じく、最初に志望理由は3つと書いてあることです。読む人にとってわかりやすい文章になっています。

2点目は、南さんにしか書けない志望理由が述べられていることです。実際に大学の先輩が働いていること、また先輩の話をきいて具体的に働きたいと思った理由が示されている点はいいですね。

蒼太 ありがとうございます。志望理由の1つ目については、僕も書いていて自信がありました。先輩の話を参考に、本当に自分自身が本心から「これは!」と思ったことが書けました。

安藤先生 では、今から改善点を伝えますね。

蒼太 わかりました。覚悟して聞きます!

安藤先生 改善点の1つ目は、自己PRと同じく文字数です。南さんの志望動機の文字数は504文字でした。やはり8割以上は書きたいところです。

蒼太 これは言い訳なんですが、志望動機については、やはり企業研究が進んでおらず、書けることが少なかったんですよね……。

どの企業にも言えそうな志望動機は伝わらない

安藤先生 そうですね。確かに企業のことを知っておくのは重要です。しかし志望動機のところに企業パンフレットやホームページ、また業界本で学んだことが書いてあったらどうでしょうか? 読み手の採用担当者はどのように思うでしょうか?

蒼太 え、よく勉強しているなと思うんじゃないですか?

安藤先生 それでは質問を変えますね。企業が志望動機を質問することの意図は何でしたか?

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