SKY-HI クリエイティブ審査、権限あるから葛藤だらけ連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(6)

日経エンタテインメント!

日経エンタテインメント!

“才能を殺したくない”思いからSKY-HIが立ち上げたオーディション・プロジェクト「THE FIRST」。SKY-HIにとってこのオーディションは、参加メンバーの才能を伸ばし、彼らをデビューさせ、成功させる目的がある。一方で、Huluや『スッキリ』(日本テレビ系)といったメディアでの展開をする以上は、ある種の大衆性を期待される。その2つのバランスは彼にとって大きな悩みどころだった。だが、オーディション参加メンバーが作詞・作曲・振り付けを手掛ける「クリエイティブ審査」への視聴者の反響が大きかったことで、流れは大きく変わった。今回は、クリエイティブ審査時の葛藤と結論の出し方を聞いた。

SKY-HI(日高光啓)は新しいボーイズグループ結成のためにオーディションを開催(写真:上野裕二)

「無理だ」と言われた審査に応えた参加者のスキルの高さ

「『THE FIRST』はHuluで配信し、『スッキリ』でもダイジェストを放送してもらっています。せっかくやる以上は番組として面白くないといけないところもありますが、自分としては譲れない部分もあり、バランスはすごく悩むところです。

ボーイズ(オーディション参加者)自身が曲を作る『クリエイティブ審査』を行うということと、彼らの自主性に委ねる部分が多いということの2点は、当初、番組制作側から難色を示されたところでもあります。前者に関しては、本当にそんなことができるのか、無理ではないのかといった懸念。後者は、番組的な“見せ場”ができないのではないかという危惧からです」

クリエイティブ審査では、国内外の有名アーティストの楽曲を手掛けるMatt CabとMATZがベースとなるトラックを提供。オーディション参加者はそれをベースに自分たちで詞・曲・振り付けを作っていった。

「クリエイティブ審査では、トップバッターのTeam Aがクオリティーの高いものを作ってくれて、視聴者の方々の反響も大きかったので(YouTubeのBMSG公式チャンネルで公開したTeam Aのパフォーマンス動画再生回数は6月28日現在、114万回を突破)、僕としては『サンキュー、Team A!』というところはマジであります。彼らが作るものに期待はしていたけれども、特に意識の高さや向上心の部分は想像以上でした。

最初は制作側も『クリエイティブ審査』なんて無理だろうと思っていたから、番組の配信回数も少なく見積もっていたんでしょうね。『合宿なんて同じ場所でやっているだけだから絵が持たない』『自然にドラマ性のあることが起こるわけがない』と。でも、起こるんですよ。あれだけ本気の気持ちの子たちが集まっていたら。最初はこちらが1度折れて制作側のスケジュールを飲み込んだのですが、上がってきた合宿の映像を見て、『これはとんでもねえ』『こんな少ない放送回数じゃ無理だよ』となったんです。ありがたいですね。

通常、オーディション番組やリアリティーショーでも、何かしら“台本”や“こんなシーンを撮りたい”があることがほとんどのようですが、『THE FIRST』は、純粋に毎週毎週の審査内容だけです。だから、今のように視聴者の皆さんが熱い反応を見せてくれることで、放送回数をどんどん増やしていけました」

次のページ
かける言葉を選ぶ難しさ