ダービー馬から禁止薬物 連鎖断ち切れるか米競馬界

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/7/7
ナショナルジオグラフィック日本版

トレーニングの後、水浴びする、ケンタッキーダービーの優勝馬メディーナスピリット。レース後の検査で禁止薬物の陽性反応が出た(PHOTOGRAPH BY ROB CARR,GETTY IMAGES)

2021年5月1日に行われた米国競馬クラシック3冠の第1戦、ケンタッキーダービーで1位になったメディーナスピリットが、レース後の検査で禁止薬物の陽性反応を示した。

調教師のボブ・バファート氏は、治療のために抗真菌軟膏(なんこう)を使ったことを認めたが、この軟膏にステロイド抗炎症薬ベタメタゾンが含まれているとは知らなかったと主張した。

米国競馬界では、こうしたスキャンダルが増加傾向にある。20年、ドーピングに関わったとして米国政府に起訴された調教師、獣医、医薬品販売業者は、25人以上にのぼった。

19年にジョッキークラブが発表した報告書では、サンタアニタパーク競馬場で22頭の競走馬が相次いで死んだことを挙げつつ、不適正な薬物使用が重大な問題であるとして競馬界の改革を求めている。

米国競馬界における薬物使用の問題は複雑だ。使用時期と用量によっては完全に合法になる薬物もある。州によって規制が異なるために混乱が生じ、それが同時に抜け道にもなっている。問題点と22年に改善が期待される理由を解説しよう。

競馬でドーピングとされるのは?

競馬でも、人間のスポーツ選手の場合と同様に、テストステロンなどを増加させるタンパク同化薬や、筋肉に送られる酸素量を増やす血液ドーピングなどは全面的に禁止されている。

しかし、数百もの治療薬が競走馬の世話のため普通に使用されており、これが足を速くしたりけがを隠したりするため不正に使用されることがある。

「薬物と言ってもさまざまです」と話すのは、薬物規制標準化委員会(RMTC)理事長兼最高執行責任者(COO)のメアリー・スコレイ氏だ。「大変恐ろしいものもあれば、まったく害のないものもあります」

レース当日の薬物の使用はほとんどの国で禁止されているが、米国では伝統的に一部の薬物の使用が認められてきた。その使用がドーピングに当たるかは、用量や投与のタイミングなどで判断される。

馬がどんな場合に、どうやって治療すべきかは長年議論されていると、競馬の薬物検査を行っているペンシルベニア大学馬薬理学研究所の所長、メアリー・ロビンソン氏は言う。「調教師と獣医の間で、必ず話し合う必要があります。人が薬の服用による効果とリスクについて医者と話し合うように、動物の患者についても同じことをすべきです」

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乱用されがちな薬物とその理由
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