難航した高品質パウチ作り アルミ箔で解決

開発フェーズで明彦氏が目を着けたのは、米国のパッケージ専門誌に掲載された「ソーセージの真空パック」だったという。缶詰に代わる軍用携行食として、お湯で温めるだけで食べられるソーセージ。その写真を見て、「これをカレーに応用できないか」と明彦氏は発案した。

当時27歳だった明彦氏は、60年に大塚に入社して5年目。大塚製薬の実質的創業者だった大塚正士(まさひと)氏の長男だ。父が製薬会社のトップとして「オロナイン軟膏」(発売は53年)や「オロナミンC」(同61年)をなどの消費者向け商品を生み出してきた姿を見てきた。「何か新しいものを作らないと」というイノベーター気質は、父と同様に備わっていただろう。

ただ、商品づくりは難航した。大塚グループには長年培ってきた点滴注射液の殺菌技術があった。これを応用してレトルト食品を作ろうとした。レトルト食品は食材をパウチ(包材)に入れて加圧・加熱することによって、食材内に含まれる微生物を殺菌する。加熱するとパウチの中身が膨らむので、それを防ぐために加圧する。そうやって殺菌されるからこそ常温でも長期保存が可能になる。

だが、具材入りのカレーを入れた状態での加圧・加熱はなかなかうまくいかなかった。本格的なレトルト釜がなかったせいで、開発チームが自作したものだったうえ、パウチに用いた樹脂素材が弱く、当初は何度も破裂したという。

発売当初のボンカレー

試行錯誤を続けた結果、ポリエチレン樹脂とポリエステル樹脂を2層に重ねて加工したパウチを開発。これでようやく完成したかと思ったが、まだ強度が不十分で、輸送途中でパウチに穴が開くことも珍しくなかった。

そういった「弱み」を抱えていた事情から、ボンカレーが発売された68年2月からの1年余りは、輸送先は阪神地区に限定されていた。積層構造で半透明のパウチは光と酸素に触れると風味が失われがち。賞味期限は冬場が3カ月、夏場が2カ月と、今(1年間、沖縄限定商品は別)よりは格段に短かった。

保存料を使わずに、常温で長期保存が可能な食品を目指し、開発陣はパウチの改良に取り組んだ。包材メーカーの協力も仰いで、ポリエチレンとポリエステルの間にアルミ箔をはさみ込む3層構造のパウチを生み出した。アルミ箔が挟まることで光や酸素も遮断できるため長期保存が可能になり、賞味期限を季節に関係なく延ばせたという。

この「アルミパウチ」も世界初の採用で、輸送中の穴あき破損問題も解決。ボンカレーは69年5月、ようやく全国販売となった。

ちなみに商品名の「ボン」はフランス語の「BON(よい、おいしい)」から取られている。素直に「おいしいカレー」という意味を込めたネーミングだ。

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理解されなかった革新性 ホーロー看板とテレビCMで訴求
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