要点3 脱成長、目指すべきは経済のスローダウン

人々を常に欠乏感に駆り立て、格差を生む資本主義は地球環境を破壊するばかりか、大多数の人間の生活を豊かにしない。目指すべきは経済の成長ではなく、スローダウン。同時に、格差を是正するためにコミュニズムも必要だ。その核となるのが、水や電力、住居、医療、教育など、誰もが必要とするもの=「コモン」を市民自身の手で管理するシステム。「コモン」を市場の論理から解放し、皆の共有の財産とすることで、多くの人が潤沢さを取り戻せるはずだ。

要点4 エッセンシャルワーク重視への転換が必要

「使用価値」とは水や空気など、生きていくために必要なもの。これに対し、「価値」は資本主義の産物で、「商品」として売れるかどうかということ。これまで「価値」ばかり重視してきた経済から脱し、食料、水、住居などの基本的ニーズを満たすことを重視する経済への転換が、気候危機の時代には必須だ。それは同時に、看護や介護といったエッセンシャルワークを重視し、きちんと評価する社会でもある。金儲けのためだけの意味のない生産や仕事がなくなれば、CO2排出量も削減できる上に労働時間も短縮されて、人々の生活の質も向上するはずだ。

要点5 世界各地で見られるコミュニズムの萌芽

地域の住民らが協同組合を作り生産を自らで管理しているデトロイト、市民が結集し自治体独自の「気候非常事態宣言」を発表したバルセロナなど、気候危機の深まりとともに世界各地でコミュニズムの萌芽が見られる。さらに、こうした各地の運動が世界中の運動とつながり始めている。ひとりひとりができることは小さくても、連帯し大きなうねりとなれば、社会の変革は十分に可能だ。

(嶌陽子)

[日経ウーマン 2021年6月号の記事を再構成]

人新世の「資本論」 (集英社新書)

著者 : 斎藤 幸平
出版 : 集英社
価格 : 1,122 円(税込み)

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