営業は「企画・開発」寄りに進化

以前、私は大学の商学部学生を対象に、営業の仕事について講義を行っていたことがあります。その会場で最初に「就職先で営業をやりたい人、手を挙げて」と投げかけると、2割ほどしか手が挙がりませんでした(現実には文系の6割程度の人が就職して最初に営業に配属されるのですが……)。

営業に対し、「キツい」「大変」というイメージを持つ人は少なくありません。しかし、営業職にはもともと、コミュニケーション、マーケティング、数字の管理など、ビジネスの基礎が凝縮されています。そして、時代の変化とともに営業スタイルも変化しつつある今、営業はより「企画・開発」に近い仕事に進化しています。

「営業ほどクリエーティブな仕事はない」――。これは、企業の営業支援を手がけるセレブリックス(東京・江東)のセールスカンパニー執行役員、今井晶也さんの言葉です。

同社では、営業パーソンに「他人に営業という仕事をオススメするか?」というアンケートを実施。すると約52%の人が「オススメしない」と答えたのに対し、「トップセールス」と呼ばれるような成績優秀な営業パーソンは、93%が「オススメする」と答えたそうです。

「売り込む」という感覚で営業を捉えると苦しいけれど、「自分ならではの発想を展開できる創造型の仕事」と捉えれば楽しい。それは、長年営業の第一線に立ってきた私自身も実感するところです。

最近は、営業パーソンが集うイベントも増えてきました。例えば「S1グランプリ(Sales No.1 Grand Prix)」。選ばれたトップ営業パーソンがプレゼンテーションとロールプレーを行い、審査員と参加者全員による採点でセールスの「トップ・オブ・トップ」を決める大会です。

主催者たちが掲げるミッションは「営業というチカラで自己実現」。営業のイメージを変え、「営業になりたい」世界の創造を目指しています。

営業職が「数打ちゃ当たる」を脱却し、「クリエーティビティー」で勝負する時代に、そのステータスは高まっていくのではないでしょうか。

「営業を科学する」視点で、成功体験の分析を

では、これまで「旧型」の営業を続けてきた人はどうすればいいか。転職を図る場合、もちろん応募先企業によりますが、過去の成功体験があまり評価されない可能性があります。

しかし、顧客と接する中で、「潜在ニーズを引き出す」「気持ちの変化を察知する」「信頼関係を築く」といった部分は、営業に必要な要素として普遍的なものです。

これらに関わる「自分ならではの成功体験」を分析し、ノウハウをきちんと言語化し、転職先でも再現できるようにしておくことをお勧めします。

トップの営業成績を挙げて表彰された方のスピーチを聞いていると、「チームメンバーのサポートのおかげです」「ラッキーでした」「いいお客様に巡り合えました」といった言葉をよく耳にします。本音では自身の営業スキルに自信を持っているのかもしれませんが、「長年の勘」「培ったセンス」といった、漠然とした自信であることも多いように思います。

そこで、営業がうまくいった要素を振り返って、理由や方法論を分析してみてください。例えば、「興味がなさそうだったお客様が、この切り口で話した瞬間、目の色が変わり、前のめりに質問してきた」といった具合です。

どんなアプローチが顧客の心に響き、購買意欲をかき立てるのか。自身の経験から分析し、それを「誰もが再現できるメソッド」化しておきましょう。

このように、「営業を科学する」ことが、これからの時代に求められていると思います。

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