――服装は発想に影響すると考えますか。

「創業したてのころに米西海岸にあるサンタクルーズのベンチャーに行って、面白いシーンに出合ったんです。彼らは日常的に自由な服装なわけですが、その会社がですよ、毎週水曜日を仮装デーとしていたんです。エグゼクティブから若い人までが全員仮装して水曜日に会社にやってくる」

――日本はカジュアルフライデーなのに。

「僕がレンタカーで訪問すると、パンク野郎みたいな若者がスケボーでぶわーっと僕を追い越してオフィスに入っていく、受付嬢は肌を思い切り露出した服装で出迎える。普通のカジュアルウエアだった僕は浮いちゃって(笑い)。約束していたシニアバイスプレジデントはハリウッドからメーキャップアーティストを呼んでフランケンシュタインになりきっていました。前の日は寝てないよ、と言っていましたけど」

ルイ・ヴィトンの靴。美しい曲線の完成された形だ

IT企業のイメージ 無機質から「緑」に

――サプライズ合戦。どれだけ驚かせられるかが勝負なんでしょうね。

「日本の大企業はすぐ何をやっているんだ、とか、それが投資対リターンで何になるんだ、とか言ってしまう。でも、当時はまさに知的財産(知財)で勝負するビジネスモデルの幕開けのころだったんです。ソフトウエアに価値を置くようになっていった時代です。そのソフトウエアの価値っていうのは人間が創り出すもの。人間を自由にして思考の空間を広げる、みんなで面白おかしく騒いで会社を活性化するっていうのが、当時のシリコンバレーでした。会社にfunを持ち込む、make fun、という考え方です」

社員も癒やされるオフィスにしたいと金丸さんのアイデアで「ジャングル」を作った。ふんだんな植物は時々養生させながら大切にケアしている

――仮装もそのひとつ。発想のよりどころでもあるわけですね。

「そう、ジョークが発想を育むのです。最高経営責任者(CEO)の誕生日の前の晩に社員総出でオフィスのど真ん中に社長室を移動してしまい、当日、秘書が、こちらです、とCEOを案内してびっくりさせる、というエピソードも聞きました。ジョークに命懸け。これが知財で勝負するということなのだな、と僕は気付いたんです。ジョークではなく作業だと考えると、50人の社員が5時間ずつ費やしたので、その250時間はなんて無駄なのだ、となります。ところがこの250時間を過ごしてだれか1人があるひらめきを思いついたら、それでいいわけ。グーグルやアップルもそういう世界だったのでしょう。グーグルの検索エンジンは、見えているのは四角い箱。それが時価総額1兆ドル(約110兆円)という世界になる」

――オフィスといえばフューチャー本社もユニークですね。会議室前のアプローチの壁一面には竹林が投影されて蛍が飛び、水が流れています。

「プロジェクションマッピングで日本の風景を映し出し、春は桜、秋は紅葉という具合に変わるんです。足元には水があって。普通じゃない光景にお客さまも驚かれて、時々水に足を入れてしまう偉い方もいて……。うちも知財をビジネスモデルにしている会社ですから、シリコンバレーのたくさんの企業に刺激を受けてきました。以前のオフィスはハイテク企業のイメージを出そうと徹底的に無機質でした。でも、こちらに移るときにみなに意見を聞いたらマイナスイオン、緑、といったキーワードが出てきたんです。そこで受付フロアにジャングルを作ろうと僕が決めました。植物のメンテナンスには結構な金額がかかりますし、最初はビル側の反対もありましたが、やっぱり僕は発想を大事にしたい」

本社の会議室フロアではプロジェクションマッピングで投影された竹林が出迎える。足元には水。涼感を誘う

――癒やされ、開放的な空間は思考も磨くわけですね。

「合理性、ストーリー性、インパクト、社内のサプライズ。やっぱり、考えることに懸けている会社ですから、空間はとても重要なのです」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

(下)体絞りドルガバ→オーダースーツ フューチャー金丸氏 >>


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