DV被害を減らすには教育の役割も重要です。産婦人科医の種部さんは「交際段階でDVの兆候に気づくすべを学校で教えるべきだ」と話します。具体的には「ノーと言っても空気が悪くならない相手を選びなさい」と中学生らに教えているそうです。日常の小さなことでも相手にノーを突きつけ、反応を確かめてみる――。悲劇を招かないための知恵といえそうです。

北仲千里・広島大学准教授「日本のDV対策、世界に遅れ」

日本のドメスティックバイオレンス(DV)対策の課題はどこにあるのでしょうか。被害者支援に携わるNPO法人「全国女性シェルターネット」共同代表の北仲千里・広島大准教授に聞きました。

――日本のDVの現状は国際的に見てどのような水準でしょうか。

オンラインインタビューに答える全国女性シェルターネットの北仲千里共同代表(広島大学准教授)

「日本は(殴る蹴るなど)身体的DVの被害を受けたことのある女性の割合が2017年に20%だった。台湾(9%)、香港(6%)、シンガポール(6%)などアジアの高所得国・地域に比べて高い。30~40%台に達するインドやバングラデシュに比べれば低いが、先進国では高水準といえる」

――対策は十分ですか。

「世界的に見て遅れている。日本でDVと言えば身体的な暴力ばかり注目される傾向にある。しかし相手への精神的な支配や人格否定も深刻な被害を生むし、パートナー間でも性交の強要は性的DVに含まれる」

「日本の裁判所はDVの加害者を被害者から遠ざける保護命令を出すことができる。しかし命令の対象を身体的暴力や生命に関わる脅迫があった場合に限っている。韓国や台湾では精神的DVや性的DVも考慮し、被害者が包括的にみて追い詰められたケースに保護命令を出す制度を導入している。日本も精神的・性的な暴力を法の中にきちんと位置づけるべきだ」

――新型コロナ禍のDV被害者への支援に求めることはありますか。

「新型コロナのワクチン接種をDVや虐待の被害者が安全確実に受けられるようにしてほしい。接種券は原則として住所地に届くが、住民票を移さないまま避難している被害者もいる。被害者が住所地以外でも接種を受けられるよう、国は権限のある自治体に徹底してもらいたい」

「政府はSNS(交流サイト)や電話の相談窓口を拡充しているが、DV被害者への支援は心理カウンセラーとは異なる。被害者の話を聞くことも重要だが、身の危険がある場合には実際に会って避難を手助けする必要がある。そうした対面支援においては、警察や司法に向き合った経験や、地域の実情への理解が欠かせない。現場の知恵を持つ人材は決定的に不足しており、政府は予算を使って体制を整備すべきだろう」

(高橋元気)

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