親子丼は火加減を間違えて失敗
これに比べ、シェラカップを2個使う親子丼は大失敗。焼き鳥缶の肉とタマネギを、市販のそばつゆ少々と缶に残るタレで味付けし、最後に溶き卵を加えるだけという手順は簡単に思えた。
ただ、長年使ってきたキャンプ用ストーブ(ガスコンロ)の火力が、固形燃料より段違いに強いのを忘れていた。つゆの砂糖分がシェラカップの内側に焦げ付き、その焦げ臭さがタマネギや卵の風味を台無しにした。ご飯にのせて食べたが、自分が作ったのでなければ閉口したろう。ゴシゴシこすったが、焦げはまだ完全に落ちない。
メスティンでは他にこしょう鍋と焼きリンゴにも挑戦した。1つ学んだのは、鍋物や蒸し物は不出来でもなんとか食べられるが、焼き物は失敗しやすく、失敗すれば食べるのにも洗うのにも難儀すること。試した5品目の材料費は計5071円。しかも大量に余るなど、キャンプグルメは一筋縄ではいかない。それでも新しい楽しみ方の“練習”にはなったと思う。
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メスティンはレシピ本も活況
登山の専門出版の山と渓谷社は2018年に「メスティンレシピ」、19年に続編の「メスティン自動レシピ」を発行。それぞれ18刷、11刷を重ね、2冊合計で11万4000部のヒットになっている。編集にあたった同社アウトドア出版部の五十嵐雅人氏は「正確ではないが中心読者は30~40代のキャンプビギナーだと思う」と推測する。
五十嵐氏によれば20年ほど前にもキャンプブームがあり、当時もレシピ本の需要があった。「その頃にキャンプを体験した人たちが自分の家庭を持ち、今のブームを支えている」とみる。新型コロナで制限が多い今、屋外でのプチグルメは誰にとっても気晴らしなのだ。
(礒哲司)
[NIKKEIプラス1 2021年6月5日付]