新しさと伝統の両立が、Sクラスのすごさ

まるでクーペのように伸びやかなシルエットとなった
走り出した瞬間に「これがSクラスだ」と思わせる、独特の滑らかな乗り心地は健在

ここまでSクラスの「新しさ」を紹介してきたが、小沢が心の底から感心したのは、デジタル化と並行して、従来のSクラスの価値観、走りの良さもしっかり進化させていることだ。

試乗したのはS400 d 4MATICという新世代ディーゼルモデル。全長5180×全幅1920×全高1505ミリメートルという堂々たるサイズで、ホイールベースも3105ミリメートルとアップした。しかし容姿は以前より美しくエレガントになっており、フロントマスクに以前のような権威主義的な雰囲気は漂っていない。それどころかサイドには「キャットウォークライン」と呼ぶシンプルな曲線のみが入り、リアのなだらかなラインはまさしくクーペライク。かつての威厳ある箱型ボディーからは想像もできない変貌だ。

それでいて走りにはビックリするほど伝統的な味わいが残っている。今回のモデルチェンジで、3L直列6気筒ガソリンターボを搭載する上級グレード「S500 4MATIC」「S500 4MATIC ロング」はマイルドハイブリッド化されたが、小沢が乗った3L直列6気筒ディーゼルターボには電動化技術は採用されていない。それでも単体で最高出力330ps、最大トルク700Nmという余裕たっぷりのスペックだけあって、低回転から重厚かつ歯切れの良いトルクをコンコンと発揮し、巨人の手で後ろから押されるような圧倒の加速感だ。9速ATを備えるため、ほとんどのシーンでエンジンは3000回転を超えない。

乗り心地も、走りだした途端に「ああ、再び帰ってきた」と感じる、Sクラス独特の滑らかさと安定感は健在。これだけでもクルマ好きは参ってしまうが、今回は加えてハイテク小回り性能も盛り込まれた。新たな後輪操舵(そうだ)機構のおかげで最小回転半径は5.4メートル。弟分のEクラス顔負けの扱いやすさである。

「これぞSクラス」という伝統をしっかり守りつつ、最新の技術を真っ先に取り込む先進性も備える。この「伝統力+ハイテク」の合わせ技こそがSクラスのすごさ。守りつつも攻める。それが今回のSクラスの白眉なのである。

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」など。主な著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 出雲井亨)