セブンイレブンとローソン 「ミニ弁当」発売の理由は
「ご飯は少なめにしたい」。主に女性からのニーズに応えたミニサイズの弁当が、セブン‐イレブンとローソンで次々に発売された。主食の量を抑えれば、サラダやデザートといった副食を自由に選べる。巣ごもり時間の増加で食への関心が高まり、「小容量」に注目が集まっている。小さいことは強みになる。
セブン‐イレブンが2021年5月に発売したのは、ミニサイズの弁当シリーズ「一膳ごはん」。11日に「脂の乗った炙り焼きさば」と「鶏とななたまのそぼろ」(共に税込み270円)、25日には「温玉チャーシュー」(税込み345円)と「和風カレー」(同321円)とラインアップを拡充している。
特徴は、ご飯を茶わん1杯分(一膳)に当たる約150グラムにしたこと。カロリーや糖質を気にし、ご飯を少なめにしたい女性に狙いを定めた。セブン&アイ・ホールディングスによると、「過去にも小容量の弁当を販売したことはあったが、当時は目立った伸長がなかった」と言う。明らかに消費者のニーズが変わっているのだ。
従来、弁当のカテゴリーでは女性より男性の購入のほうが多い。しかし、21年3月に神奈川県の一部エリアで一膳ごはんのテスト販売を行ったところ、女性の購入が増加。コンビニで弁当を買わない層からの流入もあり、5月の全国販売に至った。
小容量化に伴い、特にご飯の味付けを工夫しているという。例えば、「脂の乗った炙り焼きさば」ではあごだしで、「鶏とななたまのそぼろ」では鶏のだしでご飯を炊き、一体感のある味わいに仕上げた。
このタイミングで「小容量」を押し出すのはなぜか
小容量シリーズをこのタイミングで押し出すのは、食卓の変化に対応するためだ。「コロナ禍にあって、外食を控えて自宅で食事をとる家庭が増え、食卓を豊かにしたい人が増加している。複数品目がプレートに盛られた一食完結型ではなく、ビュッフェのように複数の味わいを楽しむ傾向に合わせた」(セブン&アイ・ホールディングス)
実際、一膳ごはんと一緒に、総菜の小容量シリーズ「カップデリ」やサラダなどの副食を購入するケースが多いことが分かっている。
買い回りを意識してコンビニの棚を見ると、総菜を選ぶのが楽しくなる。通常サイズの弁当を購入する場合、ハンバーグやチキンといった主食で選び、総菜の実質的な選択肢は少なかった。一膳ごはんの場合は主食を選んだ後に、例えばザーサイかひじきかといった選択ができる。複数買っておいて、少しずつ家族で取り分けることも可能だ。
さらに2点合わせても500~600円程度と、通常サイズの弁当との値段的な差もほぼない。「遅い時間にちょっと食べたい」「通常の弁当では重たい」といったシーンに合わせて選ぶ楽しさがあるぶん、小容量タイプが求められるのも分かる。
セブン‐イレブンは20年11月にカップ入りのパスタ、21年2月には小さいいなりずしなどを詰めたカップずしと、小容量シリーズのラインアップを少しずつ増やしている。今後もこの流れは続き、ニーズを見極めながら商品開発を進めていくという。
ローソンも「小容量」に参戦
時をほぼ同じくして、ローソンも小容量を打ち出す「Choi」シリーズから「Choi Gohan チャーシュー丼」と「Choi Gohan チーズがとろけるキーマカレー」(共に税込み399円)を全国店舗で発売した(21年5月25日から)。ご飯の量を従来の7~8割に抑え、単品でボリューム感が出過ぎないよう工夫。こちらも小容量ニーズを受けて開発された。
ご飯の量が少ないため、通常の弁当と比べて食べ応えに欠けたり物足りなく感じたりする人もいるだろう。それを防ぐため、チャーシュー丼にはごま油を使用して香りを付けたり、カレーでは通常よりもスパイスを利かせたりと、小容量でも満足できるよう工夫を凝らした。
Choiシリーズは20年11月に調理麺でスタートし、今回ご飯メニューへラインアップを拡大した。ローソンによると、「Choiシリーズを通じて、購入者の約7割が20~50代の女性で、特に30~40代から人気。昼や夕方、夜間に揚げ物・サラダ・総菜との買い合わせが多くみられた」。ローソンもニーズを踏まえて、今後の展開を検討していくという。
巣ごもり時間の増加を背景に、食卓では多種の品目を食べる習慣が根付いてきている。東京や大阪などでは21年6月20日まで緊急事態宣言が再延長されたこともあり、小容量タイプのニーズはますます強まるだろう。
注)一膳ごはんの「脂の乗った炙り焼きさば」は東北一部、静岡、沖縄を除く。「鶏とななたまのそぼろ」は九州一部、沖縄を除く。「温玉チャーシュー」は宮城、山形、福島、関東、静岡のみ。「和風カレー」は北海道、東北、関東、山梨、長野、静岡、近畿、中国、四国、九州のみ
(日経トレンディ 寺村貴彰)
[日経クロストレンド 2021年6月4日の記事を再構成]
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