日本の農畜水産物をもっと海外へ

ドンキホーテホールディングスは19年2月にPPIHに社名を変更して以降、海外進出に注力してきた。現在では米国、シンガポール、香港、タイなどに計85店舗を構えている。

生産者や輸出に携わる事業者・関係団体で構成されるパン・パシフィック・インターナショナルクラブ(PPIC)を創設したのもその一環だ。PPICの目的は農畜水産物の輸出拡大。PPICの会員になれば、海外にあるドン・キホーテ系列の各店舗を通じて商品を販売することができる。

農林水産省の統計によると、20年の日本から香港への農林水産物・食品の輸出額は約2060億円。香港のスーパーマーケットに行けば、日本産のさまざまな果物や野菜が販売されている。一方、竹内氏は「例えばフルーツならスーパーのようにいろいろな種類をそろえるのではなく、日本の強みがある特産品……リンゴならリンゴの種類を多くそろえるなど、1つのものを深堀りする形で売っていきたい」と、スーパーとは異なる戦略を打ち出している。

PPIC会員である愛媛県のフェアでは特産品のミカンに注力した

農畜水産物の例では、「福島物産祭」というイベントでコメなどを販売したところ、予想以上の反響があったという。「コメは有力な商品だと思います。日本で精米するのではなく、香港で精米したものを販売できないか。また中間業者に頼らず、自分たちで販売できないか。香港の水は硬水なのでどうやって日本の軟水を持ち込むのかといったことを含めて、関係者と協力していきたいと考えています」(竹内氏)

コロナ禍を逆手に出店、目標は香港に24店舗

香港は約1110平方キロメートルの土地に約750万人という人口を抱える超過密都市だ。米国の不動産会社クッシュマン&ウェイクフィールドが21年4月22日に発表した地価リポートによると、尖沙咀地区が1平方フィート当たり1607米ドルで世界第1位、銅鑼湾(コーズウェイベイ)地区が1481米ドルで2位。前年比5%減の銀座が1223米ドルで3位だが、香港の両地区は前年比約40%減の価格となっている。

香港のDON DON DONKIが2年弱で7店舗まで拡大できたことには、この地価の下落が影響している。19年の逃亡犯条例改正案反対デモや20年から続くコロナ禍もあり、香港を訪れる観光客が激減。プラダやアディダスといった域外の有名ブランドの旗艦店が次々と撤退した。一方でDON DON DONKIはその逆を行き、賃料が下がった優良物件に次々と出店していったのだ。

「売り上げ的には逆境になりましたが、デベロッパーからの引き合いが来る立場になったことで、条件交渉がしやすくなりましたね」と竹内氏。

1号店開店当時の様子。長いときは入店まで3~4時間待ちの大行列になった

PPIHでは、物件開発、調査、設計、レイアウトの作成、物流、商流、人材の採用、営業に至るまでを内製化しており、通常は地元の不動産会社などを通す物件開発も、香港育ちの日本人を採用して行っている。店舗づくりも現地採用の香港人スタッフが主導してきたという。

「香港人は日本人よりはるかにハングリーで、失敗を恐れずチャレンジしていきます。今、DON DON DONKIは注目されていますが、そこに安住せず、新しい変化を恐れずにやっていくことが今後の課題。それをしていかないと成功しないと思っています」(竹内氏)

竹内氏によれば、将来的には香港で24店舗、マカオにも24年6月までに2店舗を展開していく計画とのこと。DON DON DONKIの快進撃はまだまだ続きそうだ。

(フリーライター 武田信晃、写真提供 泛亜零售管理)

[日経クロストレンド 2021年6月2日の記事を再構成]

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