お笑いコンビ「見取り図」 台本なしのしゃべくり漫才
3年連続で『M-1グランプリ』の決勝に進出し、昨年は自己最高の3位に輝いた見取り図。これまで大阪を拠点に活動してきたが、今年に入ってから全国ネットのバラエティーに出演する機会が増え、4月からは麒麟の川島明がMCを務める朝の情報番組『ラヴィット!』(TBS系)の水曜レギュラーとしても活躍している。
ポーカーフェースで飄々(ひょうひょう)とボケ倒すリリーと、甲高い声で印象的なフレーズを交えながらツッコむ盛山によるテンポのよいしゃべくり漫才が十八番だが、3度目の『M-1』決勝では過去2回のしゃべくり漫才とは異なるスタイルのネタを1本目に披露。
リリーがおかしな言動を次々に繰り出す敏腕マネジャー、盛山がそれに翻弄される大御所芸人を演じ、審査員の上沼恵美子から「まずネタが好き。コロナでネタ合わせも十分できていないはずなのに、それを感じさせない」と絶賛されるなど、高評価を得た。
結成は2007年。吉本総合芸能学院(NSC)大阪校で出会い、「シュッとしたやつがおると思って僕から声をかけて」(盛山)コンビを組んだ。
芸人になろうと思ったきっかけは「親にNGK(なんばグランド花月)によく連れていってもらっていて、ベタな大阪の子どもという感じでした。特にFUJIWARAさんと2丁拳銃さんがやっていたバラエティー『吉本超合金』が好きで、中2くらいから自分でもやってみたいと思うようになりました」(盛山)、「小学生の頃からダウンタウンさんととんねるずさんの番組をずっと見ていて、その流れで」(リリー)と話す。
決まりごとを3つ作りそのまま舞台へ
普段のネタ作りは「2人で話しながら作っていく」と盛山。リリーが「台本のようなものは書かず、箇条書きくらい。だから『6年前のあのネタをやって』と言われても台本がないからできない(笑)。ネタ合わせ自体も、ほかのコンビに比べるとしないほうだと思います」と明かし、盛山は「"遊びシロ"を多く作っておいたほうがアドリブが出て面白くなることが多いんで、システムや構成をきっちり練ったネタはない」と続けた。
ネタ作りのペースは、「新ネタを下ろす前日に、仕事が終わってから夜中まで考えて、当日それを合わせる」(盛山)。リリーも「決めごとを3つくらい作って、そのまま舞台に出ていく感覚」と語り、そのスピード感には驚かされる。
大阪と東京の番組の違いについては、「まず出演者が全然違います。大阪はほとんど芸人だけで、東京は俳優さん、モデルさん、文化人と、いろんなジャンルで活躍する人が勢ぞろいしているイメージ」(盛山)、「大阪は企画書がペラ1のこともあって(笑)、わりと芸人にお任せなことが多いですが、東京は決まりごとが多くて、カッチリしてます」(リリー)という。
このところ、全国区のバラエティーに頻繁に出演しており、「やっぱり、『M-1』で最終決戦の3組に残れたことが大きいです。ミーハーなんで、今までテレビで見てたタレントさんに会えるのがうれしい」(盛山)、「『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に出られるなんて、と思いました」(リリー)と顔をほころばせる。
現在は週に3~4回は東京の収録に呼ばれているそうで、「新大阪から始発で東京に来て、最終で大阪に帰るのが4日続いたことも。しんどくなってきたので、東京に住まいを探すことも考えてます」(盛山)と語った。
今後出てみたい番組については、「大阪でも冠番組はまだ持ったことがないので、テレビ朝日深夜の『バラバラ大作戦』枠で、自分たちの番組をやらせてほしい」(盛山)と具体的な名前を挙げる。
将来については「テレビに出させてもらいつつ、YouTubeもやって、ネタを大事に、劇場にもいっぱい立っている芸人になりたい」(リリー)と抱負を語った。
今年の『M-1』は「まだ何も決めていない」と言うが、そのキャラクターが全国区に浸透してきたことで、『M-1』に限らずさらなる活躍を見せてくれそうだ。
(ライター 遠藤敏文)
[日経エンタテインメント! 2021年6月号の記事を再構成]
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